例えば先週末、欧米は「イースター」という復活祭(イエス・キリストが復活した日を記念する祭)の連休があったが、交通量が激減しているため、各国で交通事故死亡者数は記録的に少なかった。ニュージーランドでは、4月10日から13日までの連休で交通事故死者はゼロ。オーストラリアでも、7割以上減ったそうだ。
イギリスは、ロックダウンによって交通量が8割弱減り、死亡事故者数も激減しているという。この国では現在、クルマでどこかへ行く際、検問で警察に「不要不急の外出」と判断されたら1万円ほどの罰金で減点もとられることもあるし、場合によっては保険も無効となる。同国の国民保健サービスは、ロンドン近辺で自動車やトラックによる大気汚染がずいぶんと減り、それによって肺や心臓による死亡者も激減すると予想している。
フランスも、ロックダウンのおかげで交通事故者数が4割減ったという。3月17日の都市封鎖が実施されてから、同国の6700万人の人口が社会的隔離や外出自粛を守るように命令されている。歩行者やサイクリストも激減したので、死亡者もこれだけ減ったとフランス政府はいう。
ところが、アメリカでは、州によって増えたところもある。
僕の同僚は、2億人以上の人が「STAY HOME」するなかで、交通量は確かに減っていると言うが、例えばミズーリ州の州警察によると、3月13日からの交通量が47%減なのに対して、死亡事故者は3%増加したという。「道路はいつもより空いているので、多くのドライバーはいつもよりスピードを出して事故してしまうから」というのが警察の見解だ。
一方、ジョージア州では、昨年3月と比べて、今年3月の死亡者数は12%減となっている。カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールによれば、ロックダウンが実施された3月20日のカリフォルニア州では、交通事故数が6割減ったそうだ。
この異常事態から生じる数字をうまく活用しようとする大学研究者もいる。例えば、昨年、サンフランシスコの交通事故ホットラインにかかってくる緊急電話は毎週260件ほどだった。しかしロックダウンになってから、その件数は110件に大幅に減少した。
「クルマに乗って道路を走ること自体がどれだけ危ないことなのか、じわじわと伝わってきます」と、カリフォルニア大学デイビス校のスーザン・ハンディ博士がいう。彼女が言う通り、自動車での移動や走行というのは、本来それだけ危険を孕んでいると僕も思う。