ビジネス

2020.04.25 08:00

LINE経営統合、新型コロナ対策、そして未来──Zホールディングス川邊CEOがすべてを語る

「00年代、日本のインターネットの会社はそれなりに強かったんです。しかし、10年代、特に後半の5年で米中のグローバルテックジャイアントが圧倒的に強くなってしまった。GAFAやBATが生み出すプロダクトやサービスのレベルの高さは、彼らと戦って身に染みてわかっています。このままでは勝てないどころか、埋没してユーザーから必要とされなくなるのではと思いました」


この危機を乗り越えるためには、グローバルで戦える土台をつくり、さらにこれまで足りなかった事業上のミッシングリングを埋める必要がある。19年に強力なメッセージングサービスを持つLINEとの経営統合を発表したのも、世界と戦うためだ。

「危機感だけでなく、志で動いた部分もあります。GAFAやBATにはユニークさがありますが、私たちも自分たちにしかできないユニークな事業を生み出せるはず。それを日本やアジアのユーザーに提供して、米中に次ぐ第三極のAIテックカンパニーになるんです」

青写真はできている。武器は、Yahoo! JAPANのさまざまなサービスを通して蓄積してきたビッグデータだ。そこにPayPayのオフラインの購買データが加わることで、より付加価値の高い分析が可能になる。データドリブンなAIテクノロジーカンパニーとして、世界と勝負をするのだ。

時間をかけてようやくモバイルシフトを成功させただけに、ここでまた変革を進めれば社内から戸惑いの声もあがるだろう。しかし、川邊は「ユーザーファーストを本当に考えるなら、100年続くより100回変わる会社になるべき。変えることに躊躇はない」と意に介さない。

最後の撮影時、川邊は「マスクをつけて撮りませんか」と取材陣に逆にリクエストを出した。その場にいる誰もが、マスクは見栄えが悪いと思って表情をこわばらせた。その空気を察しつつも、「これからはマスクのほうがいいでしょ」とにっこり。危機に対応するだけでなく、追い越して先を行くような柔らかさが、川邊の真骨頂なのかもしれない。




Zホールディングス◎2019年10月、ヤフーは持株会社体制への移行に伴いZホールディングスへと名称を変更。傘下にはYahoo! JAPAN事業を分割した新設のヤフー、PayPay、アスクル、一休、ジャパンネット銀行、GYAO、ZOZOなどを抱える。

かわべ・けんたろう◎1974年生まれ。東京都出身。青山学院大学法学部在学中に電脳隊を設立。合弁会社ピー・アイ・エム(PIM)の設立を経て2000年にヤフー入社。12年に副社長、18年に社長就任。19年10月より現職。

文=村上 敬 写真=間仲 宇

この記事は 「Forbes JAPAN 6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事