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2020.04.20

実践者たちが語った「テレワークの本音」 意外と盲点な課題はどこに潜んでいる?

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作業の多くは文字/ファイルベース


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この4名が共通して口にしたことが、「通信設備・通信料金の自己負担」。自宅に光ファイバーなどの固定回線を引いているか、(スマートフォンを使う場合の)携帯電話会社との契約プランは定額制かといった確認が行われたことはなく、いわばなし崩し的にテレワークに利用されたという。PCなどのハードウェアと使用するアプリ/サービスの確認はもちろんのこと、その運用に欠かせない通信環境の確認と支援も必要なのではないか。

テレビ会議/音声会議の利用率は、メディアで紹介されるほどではないようだ。企業内弁護士のCさん(50代・男性)によれば、「コミュニケーションは音声と画面共有がメイン。テレビ会議にすると、参加者の環境次第では音だけになるため使われなくなった」とのことで、映像伝送が安定しないトラブルの多さが伺えた。

テレワーク実行中の12名のうちビデオ会議をよく行うと答えたのは、広告会社に勤務するUさん(50代・男性)のわずか1名。他の11名は音声会議を利用してはいるものの、作業の多くは文字/ファイルベースで、過半の6名が画面共有をよく使うと答えたことが印象に残った。

テレワークで浮き彫りになった住宅事情・家族事情の課題


よく使われているという音声会議は、聞く・聞かせる双方への配慮が見られた。通信会社勤務のAさん(40代・男性)からは、「ノートPC内蔵のスピーカーではなく、スマートフォンに付属のイヤホンを使っている」と、家族への配慮が伺えた。

IT系企業勤務のFさん(50代・男性)からは、「他の人のPCから子どもの泣き声が聞こえることも。環境次第ではインカム(コールセンターなどで利用されるマイク付きヘッドホン)を使うほうがいい」という意見も。「画面共有などの通常作業はPCだが、音声会議はスマートフォン。社内ネットワークの負荷軽減にもなる」(携帯電話会社勤務のNさん、50代・男性)と、職場のノウハウが生かされる例もある。

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テレワークには住宅事情・家族事情も反映されるようだ。団体職員のJさん(40代・女性)からは、「1LDKなので会議の内容が筒抜け」と都心住まいのDINKSらしい悩みが。通信会社勤務のNさん(50代・男性)は、「部屋のドアに『会議中』という貼り紙をしている」というオーソドックスな対応だが、前出の企業内弁護士Cさんは、「ヘッドホンを装着していると『いまは静かにして』という子どもへのアピールになる」と、敢えて音声会議中以外にもヘッドホンを着けるのだそう。

PCを家に持ち込み画面の向こうに見える同僚と仕事を進める、というイメージが先行している「テレワーク」。実際には、同僚の通信環境に難があると安定したビデオ会議は難しく、自分の周囲にも家族がいて生活音がある。オフィス並みの仕事環境に近づくためには、PCやスマートフォンといった"道具"だけでなく、高速なネットワークと静かな環境という"手段"の充実も必要なようだ。

文=海上 忍

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