複数の関係者によると、米国立がん研究所(NCI)がウォルター・リード陸軍医療センターに入院中の少数のCOVID-19重症患者にアカラブルチニブを投与した。その後、アカラブルチニブはほかのいくつかの医療機関でも重症患者を対象に使用された。うち一部の患者で症状に著しい改善が認められたという。
NCIはフォーブスの取材に対し、アカラブルチニブについて「COVID-19による肺疾患が進行した患者で一定の臨床効果が認められたが、かなり早期の限定された使用であるため、進行した肺疾患を抱える患者におしなべて効果があると結論するのは現時点では時期尚早だ」としている。
NCIはアカラブルチニブについて、米国で一部の血液がんの治療薬としては承認されているものの、COVID-19の治療薬としては米食品医薬品局(FDA)から未承認だとも指摘した。
COVID-19のパンデミック(世界的大流行)で医学的に最も深刻な問題のひとつは、患者の免疫システムがこのウイルスを撃退する方法にある。一部の患者は、体内のサイトカイン分子が制御不能な免疫反応(「サイトカインストーム」と言う)を引き起こして肺を傷つけたり、血液や体液が肺に入り込む急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こしたりした後、重篤化もしくは死亡しているからだ。
アカラブルチニブや、同じくCOVID-19の治療薬として期待されている白血病治療薬「イブルチニブ」(商品名イムブルビカ)は、免疫システムのB細胞(リンパ球の一種)を活性化させるシグナル伝達で重要な役割を果たすタンパク質BTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)を阻害する(そのためBTK阻害剤と呼ばれる)。これらの薬はとくに慢性リンパ球性白血病の治療に有効であることが証明されているが、関節炎薬のような抗炎症作用もある。
アストラゼネカは4月第2週に、アカラブルチニブの投与を受けた患者に関する初期データをNCIから受け取った後、COVID-19に対応する特別チームを編成。治験の計画書を3日足らずという異例のスピードで完成させ、FDAに提出したという。
COVID-19は人工呼吸器の装着が必要となる重症患者の場合、死亡率が50%に達する。