新型コロナの外出制限、人々が順守を拒む心理的理由

Photo By Tom Williams/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を終息させる上で最も効果的な方法は、他人との距離を取る「ソーシャル・ディスタンシング」を守ることだという考えは繰り返し叫ばれてきた。それにもかかわらず、予定をキャンセルするのを渋ったり、いまだに集まりに参加している人もいる。

友人にこうした人がいるのはいらだたしいことだし、それが近しい家族だったら危険だ。あるいは同僚や部下だった場合は、どう扱えばいいのかが難しい。

ソーシャル・ディスタンシングの指針を公然と無視する人にはどう対処すればよいだろう? 新型コロナウイルスの危険性を否定する人はどう説得すればよいのか?

一部の人がソーシャル・ディスタンシングをとことん無視したがるのには、心理的な理由がある。そうした人は、ストレスを多く受けると反抗的な態度を取ってしまう。その理由を理解すれば、こうした人々の反応にもうまく対処できる。

事実で納得しない人との話し方


私は、神経科学者、依存症専門精神科医で、ブラウン大学マインドフルネスセンターの研究イノベーション部長を務めるジャドソン・ブルワーに話を聞いた。外出を自粛しない人がいる理由はいくつか考えられるという。

「外出禁止令を無視したりそれに逆らったりすることでコントロール感覚を保持しようとしている人や、元々の性格が反抗的で日常的に権威に反抗している人がいる。また多くの人が、現実を否定している。特に、大きな影響が出ていない地域にいる人や、高リスク集団に入っていない人、知り合いに感染した人がいない人がそうだ」(ブルワー)

ブルワーはそれから、不安は人の明確な思考力や決断力、問題解決力に「確実に」影響を与えると述べた。不安が増大していることが、現実逃避や事実の否定につながっている可能性もある。「不安が非常に増大すると、人はパニックに陥り始める」とブルワー。「それが買い占めなどの思考につながる」

こうした行動の多くは、単にコントロール感覚を取り戻す方法となっている。ライターのマヤ・コソフは、多くの人が料理や掃除といった家事を非常に細かいやり方で行っている様子をソーシャルメディアに投稿している理由についての記事を執筆した。コソフは次のように記している。

「米国心理学会(APA)で臨床研究・品質担当ディレクターを務めるベール・ライトは、コントロールを行使するこうした方法(私のスープ作りを含む)は全て、不確実性と未知への不耐性という人類共通の性質を反映している。彼女によると、不確実性への対応力は人によって違い、現在は誰もが安定していると感じるものが何もないという同じ課題に直面しており、これは不安とストレスにつながる。よって、人はこうした感情に基づいて行動する。家に閉じ込められる中で、安心感をもたらす作業や習慣を見つけるのだ」
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編集=遠藤宗生

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