マイクロソフトは3月30日、パンデミックの発生を受け、チームズを一般消費者向けにも提供すると発表。同時に、インストール済みユーザーが非常に多いスカイプもサービス提供を続けるとした。だが、機能面でより優れた自社開発のアプリケーションがあるのに、スカイプを維持することはあまり合理的ではないのは明らかだ。スカイプが企業環境ではチームズと競合しないのを考えるとなおさらだ。
マイクロソフトは、チームズへの新たな機能の追加を続けている。背景のぼかし機能のように、その一部はスカイプにも取り入れられるだろう。しかし、これが今後も続く可能性は低い。チームズの開発チームは最近、キー打ちや犬のほえる声、子どもの遊び声などの雑音をビデオ会議から除去する拡張機能を発表したが、これは今後スカイプにも取り入れられるだろうか?
競争力を保つために非常に大きな投資が必要とされる環境で、類似する機能を持つ2つの製品をポートフォリオに維持することは、論理的に考えて長期的に維持できない戦略だ。一方で、スカイプが動画の質や単なる外観の面から時代遅れになり始めていると気づいている人はほとんどいない。マイクロソフトは近い将来、製品ポートフォリオを整理し、スカイプの撤退の日付を決めて、ユーザーにチームズへの移行を促すかもしれない。
米誌ワイアードはビデオ会議ツールを比較した記事で、チームズを「マイクロソフトの役員」に適したツールだと評価。「基本的にはスラックのクローン版。スラックを単に複雑にしてマイクロソフト風にしたもので、オフィスやアウトルックにどっぷり浸かっている人でない限り、おそらく良いソリューションではない」と説明した。
この比較は非常に不公平で誤解を招くものだ。まず、チームズはビデオ会議のツールではなく、コラボレーション支援で非常に大きな効果を発揮する。それを、ビデオチャットアプリ「ハウスパーティー(Houseparty)」のようなおもちゃや、ズームやフェイスタイムのような特化型アプリと比較するのは筋違いだ。次に、マイクロソフトはしばらく前から、同社ツールの使用環境を広げる努力をしてきた。そのため、私のようなアップルユーザーでもチームズは全く問題なく使用できる。
マイクロソフトが企業環境に非常に深く浸透していることを考えれば、チームズがロックダウン下での大きな勝者となりつつあることも驚きではない。チームズはパンデミック前、世界のオフィスユーザーの多くが存在を認識し、ロゴも見たことがありつつも、全く使ったことがないツールだった。パンデミックが終息するまでには、これまでは在宅勤務に慣れていなかった多くのユーザーがチームズを日常的に使えるようになり、その後も使い続けるかもしれない。
パンデミックのような予測できない出来事により、マイクロソフトが用意周到であっただけでなく、異なるオーディエンスと市場に合わせた2つのカードを持っていたことも明らかになった。これが今後、マイクロソフトにどんな展開をもたらすのかに注目したい。