まちには、新陳代謝が必要
「俺も本当は、売りたくないんだよ」そう答えるのは、relayで後継募集を実施した一平ホールディングスの村岡浩司。村岡は地元宮崎の老舗寿司屋の2代目で、20年近く商店街の活性化に取り組んでいる。まちおこしに熱を入れている頃に、空き店舗となっていたこの場所を活性化させたいという気持ちで2008年にカフェ「CORNER」を創業。当時の商店街にはない、一風変わった先鋭的なデザインで、一気に注目を浴びた。
「CORNERを創業して11年。私自身にも、町にも新陳代謝が必要です。事業が好調な時だからこそ動き始めることが大事だと思いました」
新しいことをはじめると必ず批判の声があがる。売却金額まで公開した村岡の事業承継案件にもお金儲けではないかというような批判の声が寄せられた。しかし、今回、村岡を突き動かしたのは、お金でも名誉でもない、街への思いだ。
「ここは宮崎繁華街の顔的な場所。僕が11年間で表現できたことはここまで。次の後継オーナーがさらに町の価値を高めて、時代にあったサービスを展開する。そういう循環が起きてこそ、地方にも都市更新が進んでいくんだと思います」
足の引っ張り合いをしている場合ではない
国や企業が事業承継を推進する一方で、少子高齢化や空き家による商店街の衰退は進行している。筆者が日髙らと開催したイベントでも、事業承継が行われない一つの要因として、「情報を公開しずらい」「相談しにくい」という参加者の声があがった。
要するに他人の目だ。しかし、相談しにくいからといって、黒字廃業すれば、さらに地域の衰退は加速していくだろう。
さらに、事業承継の問題は、引き継ぐだけでは一過性の対処に終わってしまう。重要なのは事業承継をした後だ。
事業承継をした経営者は、予測不能不規則な時代の中での変化に対応しながら、事業を成長させなければいけない。
自分たちのが生まれ育ったふるさとを、次世代につないでいくためにも、足の引っ張り合いをしている場合ではない。まずは、健全な財務状態の時だからこそ早期相談からはじめてみるのが良さそうだ。そこにはきっと、現状の経営改善のヒントもあるだろう。