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2020.04.20

「他人の目」が邪魔する地方の事業承継 黒字廃業を防ぐには?

後継募集を実施した株式会社一平ホールディングスの村岡浩司

中小企業の経営者の平均年齢は、1997年からの23年間で、47歳から69歳になった(帝国データバンク調べ)。2025年には、中小企業の経営者のうち約245万人が70歳以上になるといわれており、その半分の後継者が未定だ。

特に地方においての経営者の高齢化は深刻化しており、黒字廃業の割合は49.1%と年々増加している。その原因の1つは「他人の目」。都市部と比較するとコミュニティ濃度が高く「売却」の噂が立ち、妬みひがみ嫉妬の噂話が立ちやすい地方では事業承継をしたいという声が上げにくい。

数年後には、さらに深刻化するであろうこの事業承継問題。現在進行形でこの課題に取り組む2人に話を聞いた。

事業承継の行動は、早ければ早いほどよい


政府は、事業承継問題の改善について、様々な施策を実施しており一定の成果がでている。その1つとして、事業承継税制を拡充し、相続税と贈与税の支払いを実質ゼロとした。拡充前の税制では、11年間(2008年度〜2018年度)で2500件の利用数だったが、拡充後は、2018年4月〜 2020年1月までの22カ月間で、5923件の申請がなされている。

また、後継者不在の経営者に対し、第三者への事業承継を促す相談窓口として、事業引継ぎ支援センターが全国48カ所に設置されている。同センターは現在、年間1000件程度のマッチングを実現している。

中小企業庁で事業承継に取り組む日髙圭悟は「事業承継の行動は、早ければ早いほどよい」と語る。時間がたてばたつほど、事業承継の担い手を探す時間が短くなり、廃業リスクが高まる。事業引継ぎ支援センターや自治体の相談窓口などに早めに相談にいき、事業承継してくれる後継者を探すことが1つの対処策になる。

事業承継のサービスが増えてきた


事業承継については、国だけではなく、さまざまなサービスが誕生している。東京から宮崎市に2017年にUターンした齋藤隆太は、従来、秘密主義で行われてきた後継者探しをオープンなプラットフォームでマッチングするサービス「relay(リレイ)」を2020年2月に開始した。



事業を引き継ぎたい事業主の記事を掲載し、それを見た継業候補者とマッチングする。第一号案件として、2008年9月より宮崎の中心市街地(一番街)に拠を構え、まちのシンボル的な役割を果たしてきた店舗カフェバー「CORNER/コーナー」(運営:一平ホールディングス / 代表取締役会長 村岡浩司)の後継者募集を開始した。
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写真=relay(リレイ)

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