バイオテックの投資家が予言する「コロナ後」のヘルスケア

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新型コロナウイルスは、様々な業界に多大な影響を及ぼしている。とりわけ大きなインパクトを受けているヘルスケア業界では、病院や医師、製薬会社、バイオテック企業が総力をあげてウイルスとの闘いに挑んでいる。

こうした中、ベンチャーキャピタリストのKristina Burowは、ヘルスケア業界が改革を余儀なくされ、新たなイノベーションが生まれると予測している。

「アーリーステージのバイオテックスタートアップに投資するベンチャーキャピタリストたちは、みんな楽天的だ。私もこの恐ろしいパンデミックの先に、希望の兆しを見出している」とシカゴに本拠を置くArch Venture Partnersでマネージングディレクターを務めるKristina Burowは話す。

Burowは、18年に渡りヘルスケア分野の投資を担当し、今年2月にIPOを果たしたBeam Therapeuticsや2019年2月にIPOを果たしたGossamer Bioなどの、大型案件を手がけてきた。

Burowは、投資を検討する際に重視する点について、次のように述べている。「科学的な裏づけがあり、患者の命を救うことができる技術であれば必ず成功する」

そして今、最もニーズが高く、Burowも注目しているエリアが感染症対策だ。彼女は、サンフランシスコに本拠を置く「Vir Biotechnology(ウィル・バイオテクノロジー)」に出資した。同社は、2016年にNelsenが設立し、HPV(ヒトパピローマウイルス)やインフルエンザ、結核、エイズなどの感染症の治療法を開発している。

同社は2019年10月にIPOを果たし、現在はGSKやサムスンバイオロジクス、遺伝子治療のスタートアップGeneration Bioなどと共同で新型コロナウイルスの治療法やワクチンの開発を手掛けている。

Burowは、テクノロジーによって従来の官僚的な制度が排除され、患者がより迅速に治療を受けられるようになると期待している。「ウーバーやインスタカートを使い慣れた世代は、現状のヘルスケアのあり方に我慢できないだろう」と彼女は話す。

さらに、今後の大きな可能性を秘めているのが遠隔診療だ。ソーシャルディスタンシングの定着により、オンラインで医師から診療を受けることが普通になるだろう。患者の体を診察する必要がないメンタルヘルスは、特に遠隔診療に適している。

「Zoomやメール、テキストメッセージなどを活用することで、医療は素晴らしい進化を遂げることが可能だ」とBurowは話す。

彼女によると、遠隔診療がその効果を最大限に発揮するためには、州境を超えた診療を容易にしたり、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)を改定し、患者が自身の情報にアクセスしやすくするなど、規制を変える必要があるという。

「HIPAAはデータ保護に特化した法律に改定されるべきだ」とBurowは話した。彼女は、新型コロナウイルスの影響によって新しいアイデアやイノベーションが生まれると考えている。「これまで見たことがないような新たな企業が誕生するだろう」とBurowは予言した。

編集=上田裕資

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