【最終回】道の歩き方がわかった|乳がんという「転機」#17

北風祐子さん(写真=小田駿一)

新卒で入った電通という大企業で25年間働き続け、仕事、育児、家事と突っ走ってきて、「働き方改革」のさなかに乳がんに倒れた中間管理職の連載乳がんという『転機』。いよいよ最終回となる第17回を迎えました。 筆者の電通 チーフ・ソリューション・ディレクターの北風祐子さんにとって、乳がんにより死を意識した経験は自身をどのように変えたのでしょうか。世界中の誰もが価値観や人生観の転換点に立っているいまだからこそ伝えたい、北風さんの「転機」──。

がんの確率、ほぼ100%──|乳がんという「転機」 #1

時間がない人たちが助け合う場所を作りたい


病気のせいで予定よりちょっと遅れてしまったが、仕事では、時間がない.comという実験を再スタートさせることになった。

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かねてから、仕事、家事、育児が重なって時間がない人たちが助け合う場所を作りたいと思っていた。自分が忙しかったときに「あったらよかったのに」というものを作りたい。世の中は働き方改革モードでも、仕事、家事、育児が重なると、やはりどうしても自由時間は少ないわけで。まずは、ピンチを救ってくれるモノやサービス、コツを紹介していく。

……と書くとかっこいいのだが、実際には失敗の連続。それでも全くやめるつもりがない自分がいる。なんで続けたいのか、理由をよく考えてみた。

まるで中二病のようだが、私は、フラットでオープンな、働きやすい会社、社会に変えたいと、強く思っているのだ。会社は、仕事をする場所であり、世の中にアウトプットできる場所なのに、ジェンダー・異文化・年齢・障がい・病気など様々な理由でやれることが限られてしまう人がいる。差別を減らし、「やれること」「やりたいこと」を社内や世の中の「やってほしい」というニーズとマッチングしたい。

加えて、自分ががんに罹患したことで、マイノリティの当事者になった。当事者として、社内外の差別と向き合うために、あえてがんを公表した。差別があるなら体感して、リアリティのある改善策を考え出したかった。

机上のCSRだけではマイノリティは救えない。ということは、CSRとソーシャルビジネスを同時に実現してこそ、働きたいすべての人がいきいきと働ける世の中になるのではないか。幸い、今いる会社には、アイデアの実装・実行を推進できる仲間がいる。私も貢献できるように、学ぶべきを学び、試しながら、地力を上げていきたい。
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文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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