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乳がんという「転機」


そうしたら、何人かが、フォローしてくれた。

「トイレットペーパーのくだりは、僕が話していたたとえを北風さんがパクッてる流れですので、ぜひ、徹底お願いします。ゴミ箱に捨てるときにひっくり返して“スポッ”と外れるの、結構爽快ですよ」

「ひっくり返す爽快感、わかります! ここまで考えてデザインされているんだ、と毎回感心しています」

街のゴミ箱の上にナイキのバスケットゴールが付いている事例や、世界No.1のプレイヤーはどっち? と、タバコの吸い殻でロナウドかメッシに投票させた事例などの画像をあげてくれる人もいた。さらに、誰かが機器の本体に手製のゴミ捨てマークを貼ってくれていた。

コーヒー

一連のやり取りが、私の苦言のキツさまでやわらげてくれた。「ずっと言いたかったことを言ってくれてすっきりしました」と言いに来てくれる人もいた。

ありがたいなあ。大企業病につきものの、ちっぽけなパワーゲームが横行していると、健全で前向きな組織を作るのはなかなか難しい。でも、こうして足元から、空気清浄機がちゃんと作動すると、もっと仕事の進め方も改善していくのではないか。誰だって、空気がよどんだ職場にはいたくないはずだ。

かくして、コーヒーマシーンに前の人のカプセルが残っていることはなくなった。が、ちっぽけな責任感と、おせっかいな母性のせいで、たかがカプセルひとつに多くの時間を使ってしまった。

さて、それはそうと、公私ともに、「やるべきこと」をたくさんやっているうちに、私自身の勤続疲労は、もはやごまかせないほどに溜まってしまった。おそらく本当にやりたいことをやっているわけではない、という歪みも、心身の不健康の原因になっていたのだろう。やりたいことがあるうちに、なんとかしろ!と乳がんに言われた気がしている。

親友で医師のMを見ていると、つくづく思う。医師という職業は、心身共に過酷な業務ではあるが、困っている人を助ける、という大義が根底にある。だから、職業選択に迷いがないし、生涯を賭けても後悔がないのではと思う。やりたいことと、やるべきことが一致している。まさに天職。

私もいつか定年のない世界へ踏み出し、振り返ったときに天職に出会えたなと思えるように、あきらめずに、一歩ずついこう。

文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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