【最終回】道の歩き方がわかった|乳がんという「転機」#17

北風祐子さん(写真=小田駿一)


医師からの圧巻のフィードバック


そして、最後の医師からのフィードバックは圧巻だった。

●悪玉コレステロールは、1だけオーバーしているが、これはアウト。受験でも、ビリで受かるのと、トップで落ちるのとでは雲泥の差。術後1年目はビリでもクリアしたのに、気が緩んで今回はアウト。甘いもの、揚げ物、乳製品の食べ過ぎにも気を付けて、よく運動して、1年しっかり自分を律してください。来年は正常範囲にしてください。外側がきれいでも(と、ここはお世辞で持ち上げて)内側がドロドロじゃ嫌でしょ。
→これはもうおっしゃる通りで、ぐうの音も出なかった。受験の比喩も、娘の大学受験の結果待ちという現状とオーバーラップして痛いほど説得力があった。

●ちなみにさっきここでお昼食べたでしょ。最後にクッキー出ましたよね。(嗚呼! 食べちゃいました! と言うと……)それはいいんですけどね、こちらが出しちゃってるんですから。でもね、あれね、たった1枚で91Kcalもあるんですよ。消化しようと思ったら、2kmを息が上がるくらいで走らないとだめ。(そんなのできません……)でしょ。だから、そうやってちょっとだからと思っても、運動で解消しきれずに、だんだんたまっていくんです。(これからは子どもへのおみやげにします……)そうです。お子さんはね、まだ甘いものを食べても大丈夫なんです。ぜひ、おみやげに持ち帰ってください。

●手術を受けた病院で、マンモグラフィとエコーのタイミング、受ける場所を聞いてくるように。先生は忙しいから、細かくは教えてくれない。タイミングと場所は、たくさんのパターンがあるから、ちゃんと書き出して質問せよ。先生は〇✕をつけるだけにしておくとよい。
→これもおっしゃる通り。マンモグラフィとエコー。手術を受けた病院、ブレストクリニック、人間ドック。半年ごと、1年ごと、2年ごと。これの組み合わせ。何種類になるんだろう。たくさんある。手術を受けた病院では年に1度の経過観察。問診の短い時間で、この組み合わせを全部覚えて口頭できくなんて無理だ。書こう、紙に。書こう。

●便中ピロリ菌の検査、これ、2年前も受けててOKでしたよ。受けたの忘れてた? でも2年前は仕方ないよね、乳腺の事件でそれどころではなかったものね。わーっと吹っ飛んじゃったよね、ほかのすべてが。たいへんでした。で、ピロリは今回は必要なかったですね。今回OKなら10年くらいは受けなくていいです。そんなにすぐに育たないから、ピロリは。

●ポリープは、いろいろなところにあるけれど、ちゃんと毎年チェックすればいいんです。大きな病気を乗り越えたんだから、晴れやかに前に進めばいい。親戚の集まりとかがあったら、おせっかいおばちゃんになって、そこにいるすべての女性に乳がん検診すすめてください。(ピンクリボンアドバイザー初級を取った、と言ったら)それはすばらしいことです!

健康だったときは1分で終わったフィードバックが、今回はなんと30分。しかもおもしろくて、力を与えてくれる先生だった。手取り足取りアドバイス。診察室が、先生の一人芝居の劇場のように感じた。こちらはずっと笑いっぱなし。この先生に当たったのは、偶然かな。ラッキーだった。

そう、何を隠そう、私は甘いものが好きなのだ。もう認めるしかない。そして、意志も弱い。でも、今日の先生に1年後胸を張って「悪玉コレステロールを正常範囲に入れました!」と言えるように、がんばろう。併走してくれる人がいると、安心して走ることができる。

たった30分話しただけで、その後1年間会わなくても、いや2度と会わないかもしれなくても、併走してくれると感じられる存在。偉大だ。健康とは、心技体すべてセットで考えなくてはいけない。いい医師の言葉からは、そんなメッセージを強く感じる。
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文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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乳がんという「転機」

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