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乳がんという「転機」


一人で悩んでいる人が減るように


2019年春。私が勤めている会社にいるがんサバイバーの御園生泰明さんは、自分も闘病中であるにもかかわらず、がんになっても笑顔で暮らせる世の中になることを願って、がんサバイバーのための活動をしている。彼は、術後でヨタヨタしていた私に、こう話してくれたことがある。

「生きている間を幸せに暮らしたいのは皆同じだと思います。にもかかわらず、がんという病気のせいで幸せになりにくい人もいるので、少しでもそれを解消できればなと思っています。そこに僕自身幸せを感じるということもあるので」

当時、自分のことで精一杯の私は、御園生さんに信じがたいほどの力を感じ、そばにいて役に立ちたいと思った。それで始めたのが、社内のがんサバイバーと、身近なサバイバーのサポーターが集まる場、「LAVENDER CAFE」(ラベンダー・カフェ)だ。

電通 北風祐子

がんになったばかりで一人で孤独。どうしていいかわからない。話を聞いて欲しい。治療で注意すべきことや役立つ情報を教えて欲しい。がんサバイバーをサポートしたいけどどうしたらいいか。身近な人ががんになったが、どう接したらいいのか。

がんになった人の34%が依願退職、解雇されているというデータがある(2013年静岡がんセンター調べ)。

がんは、法律や制度が整備され、治療法が進歩したことにより5年生存率が7割近くになったにもかかわらず、多くの人にとって「死に至る病」というイメージが変わらず、同僚の罹患や治療に対して冷たい態度をとる社会人が多いそうだ。この会社でも、今までがんに罹患して闘病してきた人は多数いる。自らがんと公表して同僚に支えてもらいながら仕事を続けている人がいる一方で、中には差別を恐れて、通院すら隠して治療を続けている人もいる。

一人で悩んでいる人が、少しでも減るように。

がんと一口に言っても、部位、ステージ、バックグラウンド、ライフステージなどによっても悩みは様々で、受け止め方も人それぞれ全く違う。LAVENDER CAFEは、自分ががんであることをカミングアウトすることを強要するのではなく、「そうしてもいい会社の文化」をつくる第一歩でもある。違いを互いに慮りながら、「がんを抱えて働いている」という共通項のもと、安心して話せる場を作りたいと、主宰メンバー一同で考えている。

がんになったら、周囲に伝えることもできて、必要なときはサポートしてもらい、それまでと同様に働ける仕組みと企業文化を作っていきたい。さらに、企業間でも相談できるところまでつなげていきたい。

文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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