米抵当銀行協会(MBA)によると、2020年3月2日から3月16日にかけて、住宅ローン融資会社に寄せられた返済猶予の申請件数は、1270%増加した。続く3月16日から3月30日にかけても、1896%増となった。
返済が猶予されている住宅ローンは、全体の2.66%に上っている。返済猶予とは、住宅ローンの借り手が、返済を一定期間にわたって一時停止できる救済プログラムだ。
米国で住宅ローン会社を扱うプラットフォームの最大手、デジタル・リスク(Digital Risk)のマネージングディレクター、ジェフ・テイラー(Jeff Taylor)は、返済猶予の申請件数はここ数週間で「驚異的に」増えていると話す。
「米住宅ローン会社の上位5社それぞれが、2020年3月のひと月で受け付けた返済猶予の申請件数は、金融危機が起きた2008年の1年分をすでに超えている」とテイラーは述べる。「1か月間に寄せられた返済猶予申請の件数は、2019年など一般的な年と比べると50倍以上だ」
MBAのデータを見ると、住宅ローン全体のなかで、返済猶予を受けている住宅ローンが占める割合は、3月のひと月で、わずか0.25%から2.66%に急上昇したことがわかる。
MBAのシニアバイスプレジデントでチーフエコノミストのマイク・フラタントーニ(Mike Fratantoni)によると、返済猶予の急増で最大の打撃を受けているのは、独立系の住宅ローン融資会社(預託金を持たない融資サービス企業)だ。そうした会社が貸し出している住宅ローンでは、現在の返済猶予率は3.45%に上っている。
そうした独立系住宅ローン会社のひとつ、ミスター・クーパー(Mr. Cooper)でも、返済猶予の申請件数が急増中だ。同社が2020年4月6日付けで米証券取引委員会(SEC)に提出した8-Kと呼ばれる臨時報告資料によると、同社が返済を猶予した借り手の数は8万6000人で、全顧客の2.5%に相当する割合だ。
同社が1日に処理する返済猶予の申請件数は、3月27日以降、8000件から2万2000件に上っている。3月27日と言えば、トランプ大統領が新型コロナウイルス救済策「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(The Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act:CARES ACT)」に署名した日だ。