新型コロナ対策、米国は経済活動の再開にらみ「抗体検査」拡大へ

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米薬品・医療機器メーカーのアボット・ラボラトリーズは、新型コロナウイルスへの抗体の有無を確認するための「抗体検査」キットの出荷を開始した。

同社が4月15日に発表したところによれば、患者の血液を調べる抗体検査は、アボットが米国内の研究所や病院に提供している「Architect i1000SR」などの免疫分析装置を使用して行う。ウイルスに感染しているかどうかを調べる診断検査とは異なり、「過去に感染したことがあるか」どうかを確認するものだ。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)のなか、米国では診断検査に続くものとして、抗体検査が大きな注目を集めている。すでに感染し、抗体ができている人は、仕事を再開しても問題がないと考えられるためだ。医療従事者であれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者の治療を続けても問題がないことが確認できる。

アボットは今後、数日中に米国内の顧客向けに検査キット約100万個を出荷する予定。増産を計画していることから、月末までには合計400万個を出荷できる見通しだという。6月以降は、毎月2000万個を供給する予定だ。

抗体検査は「重要な次のステップ」であるとして、同社は次のように説明している。

「(検査によって)抗体がどの程度の期間にわたり体内に留まるのか、抗体があることは免疫ができていることを意味するのかなど、ウイルスについてより多くのことを理解することができる。こうした知識は、治療法やワクチンの開発の支援に役立つものだ」

米保健当局は、経済活動の再開や、将来に現在行われているような厳しい自宅待機措置や休校措置を取らずに済むようにするためには、抗体検査の実施が不可欠だと指摘していた。

米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド局長は米NBCテレビに対して先ごろ、「公衆衛生体制が強化され、学校を閉鎖したり、経済活動を停止させたりするような極端な措置を取らずに済むようになると期待している。私たちは感染の第2波が来ても、より効率的に封じ込めを行うことが可能な体制を構築した」と述べていた。

診断検査体制も強化


米食品医薬品局(FDA)はより迅速に「ポイント・オブ・ケア(POC)診断」を行うことを可能にするため、すでにアボットのほか、メサバイオテック(Mesa Biotech)やセフィード(Cepheid)などが開発した迅速検査キットを承認している。

アボットは4月13日、全米50州の施設に診断検査用の装置「ID NOW COVID-19」56万6000台を出荷したことを発表した。この装置は分子検査法を用いるもので、新型コロナウイルスに感染しているかを“迅速に”(陽性なら5分、陰性なら13分で)確認することが可能だ。

アボットのロバート・フォード最高経営責任者(CEO)は、「当社の診断検査プラットフォーム全般に新たなソリューションを加えることで、引き続き重要かつ有意義な貢献をしていきたいと考えている」と述べている。

編集=木内涼子

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