最期のお別れもできず... コロナ危機、葬儀現場の苦難 フランス

Photo by Veronique de Viguerie/Getty Images

フランスでは、新型コロナウイルスの流行が続く中、葬儀業者らが悲しみに沈む家族のケアとスタッフの安全確保の両立に苦慮している。

フランスの葬儀社チェーン、ポンプ・フュネブル・ド・フランス(Pompes Funebres de France)のサンドリーヌ・ティエフィーヌ最高経営責任者(CEO)は「遺族にとって今最も辛いのは、通常のやり方で死者を弔い、送り出せないこと」と言う。

同業界で30年近くの経験を持つティエフィーヌによると、新型コロナウイルスによる死者の多くは、遺体が直ちに密閉したひつぎに入れられ、家族と対面できない状態になるのだという。これは「非常につらい」状況だとティエフィーヌは語った。

先月24日には当局が規制を緩和し、新型コロナウイルスの犠牲者を直ちに埋葬する必要がなくなったため、遺族らは一定の距離を保ってなら最期の対面ができるようになった。

4月の頭には、葬儀業者の感染防止に向けた1カ月間の追加措置として遺体の防腐処理が禁止され、遺体は手早い洗浄を経て服を着せられるだけになった。死化粧がされず、防腐剤のホルムアルデヒドも使用できないため、遺体は腐敗が食い止められていない自然な状態で遺族へ引き渡されることとなる。

しかし、ポンプ・フュネブル・ド・フランスを含め、葬儀社の多くはスタッフの感染を防ぐため、遺体をすぐにひつぎに納める方針を取っている。

さらなる問題として、個人用防護具(PPE)の不足がある。葬儀業者は防護具を優先的に入手可能な業者のリストに入っていないことが理由だ。「防護具、特にマスクが大きく不足している」とティエフィーヌは言う。「仏政府は私たちにもマスク入手許可を出すと表明したものの、まだ何も確定していない。今もマスクがない状態だ」

それでも葬儀業者らは、遺族の悲しみを和らげ、同時に葬儀スタッフの感染も防ぐために、デジタル機器を活用している。

フランスでは対人距離を確保する措置として、教会での集会には20人までしか参加できず、墓地への埋葬にも10人程度しか立ち会えない。火葬は通常、遺族の立ち合いなしで行われている。

一部の葬儀場では、葬儀のストリーミング配信を始めた。1886年創業のメゾン・クリデル(Maison Cridel)もその一つだ。ロマン・パインドリオCEOは「この健康危機により、葬儀業界は特注の葬儀やデジタルツールの開発などの新サービスに向けて急速に進化するだろう」と語った。

編集=遠藤宗生

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