5G到来で誰でもプロ並みの映像編集が可能に
この技術がUGCにもたらされると、プロとアマの映像編集のレベルの差が埋まってくる。
NTTドコモはこうした技術をコンシューマーに届けるべく、『MARKERS』というアプリを1月にリリースした。スマホアプリで映像を撮影中に映像をクリックし特定のシーンをブックマークすると、ブックマークした映像部分が自動で編集され、ハイライト・シーンをつくり出してくれる。しかも複数のスマホで撮影した映像のタイムラインを用いることで、アプリ上で映像を同期させることも可能だ。
これまではご家庭のお父さんが運動会をビデオで撮影、それをPCで我が子のシーンだけを編集し、祖父母や親戚にDVDで配る、あるいはYouTubeなどで共有していた。その労力が減るだけに、このようなアプリの誕生はご家庭のお父さんにとっても朗報ではないか。
さらにこのアプリは大学の体育会などでの活用も視野に入れられている。これまではコーチが試合動画を撮影、それを再チェックし、プレーの修正ポイントなどの「ハイライト」を手動で切り出していた。この作業をアプリが代わりに担うことができ、さらに編集されたハイライトは、そのまま各選手のスマホに共有可能となる。
あるグループ内で動画を共有する場合もYouTubeで限定公開されてきたが、編集から共有までできるアプリも登場 (Shutterstock)
これからのUGCは、スマホで撮影、編集、共有まで可能になるが、ここで5Gが大きく寄与することになる。
「スマホで編集」としたものの、厳密には編集を行っているのは、スマホ上ではない。ネットワークを介しクラウド上にストアされている映像を、スマホから編集、共有についてもスマホからクラウド上の映像を覗きに行く方式だ。
5Gによる大容量・高速通信を介すことで、端末上で編集するというハードウェアの制約から逃れたことで、容量の大きい動画でもクラウド上で編集し、UGCを容易に生成することができるようになった。編集作業にハイスペックなハードウェアを用いずとも、スマホだけでクオリティの高い編集ができるようになったのだ。
これが普及すればアマチュアとプロの溝が埋まり、よりクオリティの高いUGCが世の中に溢れ出す。
新型コロナウイルスの猛威により緊急事態宣言が発令され、スポーツ選手も自宅待機を余儀なくされる今、メディアも取材で現地を訪れることができない。そんな中、選手やチームが自身で動画を撮影し、SNSで発信する機会が多くなり、チームによっては、100万もの再生回数も記録している。
最近ではテレビ業界も新型コロナウイルスによる自粛の影響によって、UGCを番組で取り上げることが増えている。ウイルスの蔓延がUGCの普及を後押しするという、皮肉な状況が見て取れる。
5Gの登場によりUGCとAIの活用が促進され、旧メディアには大きな変革、ディープインパクトを与えると読む。しかし、いずれやって来る大きな衝撃波に乗り遅れることさえなければ、それはメディアに明るい未来をもたらすはずだ。
連載:5G×メディア×スポーツの未来
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