ビジネス

2020.04.17 12:00

若きリーダーたちはどうコロナ危機を乗り越えるか #30UNDER30


オンラインホテルや未来の宿泊券/龍崎翔子(ホテルプロデューサー)


ホテルは最もコロナショックの大きな影響を受けている業界のひとつだろう。「HOTEL SHE, KYOTO」など5つのホテルを経営する龍崎翔子も臨時休業を決断したうちの1人だ。しかし、30UNDER30のコンシューマー・ビジネス部門で選出され、日本のホテル業界に新風を送る彼女は、斬新なアイデアでこの危機を乗り越えようとしている。

龍崎がCCOとホテルプロデューサーを務めるL&Gグローバルビジネスは、臨時休業を発表した1週間後、全国のホテル事業者が活用できるように「未来に泊まれる宿泊券」の販売を開始した。宿泊予約プラットフォーム「CHILL’NN」から販売されているこの宿泊券は、いつか旅行をする日のために宿泊予約ができるというサービスで、すでに石垣島や湯河原など20以上もの宿泊施設が登録をしている。インバウンドや観光客の激減により、経営さえ危ぶまれているホテルや旅館が多い中、未来の予約により少しでも支援ができればと生まれたサービスだ。

ホテル業界の救済だけでなく、宿泊者への配慮も忘れていない。

以前から運用していたnote上で連載記事などのコンテンツを発信する「SOCIAL HOTEL LAB.」をリニューアルし、オンラインにしか存在しない架空のホテル「HOTEL SOMEWHERE」をオープンした。ホテル業界人と龍崎がホテルの未来について対談する連載企画「ニューウェーブホテル学概論」やスタッフがオススメのホテルを紹介する連載記事「なくならないでほしいホテル」など、他では見られない情報を配信する。

ホテルのメディア化プロジェクトと呼ぶこの取り組みには、人々が自宅で過ごす時間が多くなる中でホテルにできることを考える龍崎の思いが込められている。「メディアとしてのホテル」と掲げ、ホテルという空間を体験してもらうという彼女の発想は、ホテル業界の危機的な状況をチャンスに変えてさらなるアイデアを生み出すだろう。


ホテルシェルター
ホテルシェルター・ビジュアル。「STAY HOME」が難しい人の安全を守るために生まれたプロジェクトだ。

さらに、外出自粛要請が出ているが、家で安全に過ごすことが難しい人たちに向けたプロジェクト「ホテルシェルター」も4月16日にリリースした。休業している宿泊施設の中でも、100室以下のホテルは新型コロナウイルスの陽性患者を受け入れることができない。そこで他の方法で役に立てないかと考えた龍崎は、「#stayHOTELstaysafe」というキャッチフレーズのもと、家庭内にトラブルを抱えている人や、家族にウイルスを移してしまう危険性があり自宅に帰れない医療従事者らのためにホテルを利用してもらおうとこのサービスを立ち上げた。 1泊あたり3000円という低価格で、ガイドラインに乗っ取った感染対策も万全だ。また、法人や医療機関の経営者に対しても、やむなく通勤する従業員のためのホテルシェルターとして活用することを呼び掛けている。
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文=田中舞子

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