ゲリー・ペドノー医師
カリフォルニア州ロサンゼルス(ロサンゼルス郡女性刑務所の精神科医。服役囚が刑務所に入所する前にスクリーニングを行い、発熱の有無やその他リスク要因のある患者を隔離してきた。裁判所も臨時閉鎖している)
私は精神病を持つ受刑者を避難させる最前線にいます。彼らはC型肝炎、心疾患、HIVまたは糖尿病を患っているケースが少なくありません。彼らが感染すると病状によってはリスクが高くなるため、治療だけでなく患者に対する教育も行っています。彼らに頻繁に接触するのが私1人だけの時もあります。
刑務所の同僚はソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)のルールを守っており、職員の食堂は今「テイクアウト」エリアとなっています。(集団感染が起きた)ニューヨークのライカーズ刑務所についての記事を読む限り、私たちの方がうまくやっていると思います。おかげで直接の影響を受けた患者に出会うことは今のところありません。ここは全米最大規模の刑務所なのでありがたいことです。
SNSが過熱して、不安をあおっていると思います。リアルタイムの事実だけを見れば、緩和はかなり成功していると思います。私が今一番心配しているのはこのソーシャル・ディスタンシングが続いたときに意図せず与える人々への影響です。人々の不安は高まり、うつ病、家庭内暴力、虐待などの増加が予測されます。今のところは、まだそうした問題は聞こえてきません。
ライアン・キム医師(40歳)
カリフォルニア州サリナスバレー州刑務所(カリフォルニア州更生課の医師。現時点でこの3,000人収容の刑務所で感染者は出ていないが、刑務所にある検査キットが少なく、確実に把握はできていない)
この時点で、刑務所でまずしなければならないことは新型コロナウイルスの症状がある患者を特定することです。彼らが重篤、重症、軽症かによって分類する必要があります。検査ができる数は限られているので、検査の対象者を慎重に選ばなければなりません。ルーティーンの治療は全てキャンセルしました。いまは全くしていません。緊急のケースと新型コロナウイルスらしい症状のある患者に集中しています。
私はこれほどの規模の、これほどクレージーな状況を今まで見たことはありません。エボラ熱やSARSのようなものをここでは見ることがありません。私はこのような状況に対処するトレーニングを受けていません。この施設の医師や看護師に十分な個人防護具が不足していることもとても心配です。
アメリカは世界一金持ち国なのに個人防護具を供給できないんです。この病気はこの刑務所に「来るかどうか」ではなく「いつ来るか」の問題です。恐ろしいです。刑務所の外で(流行)曲線を平らにすることで免れられればいいと願っています。