新型コロナと闘う米医師15人の証言(上)

Photo by John Moore/Getty Images


へナ・ボルネオ医師(49歳)

カリフォルニア州オークランド
(ハイランド病院のアラメダヘルスシステムに勤務。あらゆるレベルのケアが必要な患者を診ている)

このパンデミックは、私たちの職場にばく露に対する不安と恐怖を生みました。自分自身、同僚、そして患者のために(院内感染防止を)呼びかけることが本当に大事です。安心して仕事ができることが必要です。私の夫も医師ですが、家ではお互いに隔離して寝室も別にしました。家に入るとすぐにシャワーを浴び、携帯電話、ポケベル、バッジ、眼鏡など全てをアルコールで消毒します。家の中に何も持ち込まないようにしています。

カリフォルニア州でのソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)はニューヨークなどより早めに行われてきたので、患者の急増を少しは抑えられたのではと楽観的でいたいと思っています。それでも数字は明らかに増加しています。それは疑いようもありません。コミュニティの前向きな姿勢に嬉しい驚きを感じています。病院のために車で個人用保護具を集めてくれたり、援助の手を差し伸べてくれたり。助けようとしてくれる人々の姿は本当に素晴らしいです。

エミティス・ホソダ医師(50歳)

ワシントン州オーバーン
(シアトル近郊にあるマルチケア・ヘルスシステムの内科医。同病院はこの地域で初めのころに発生した患者の治療に当たった。プライベートの先進医療診療所も経営)

2015年、エボラ出血熱の大流行が起きたとき、CDC(米疾病予防管理センター)の手紙で、個人用防護具を蓄えるよう指示されました。いま私の個人診療所にN95マスクと防護服があるのは、たまたまその手紙をもらったからにすぎません。今回、CDCは何もくれません。ただ、新型コロナウイルスに関する科学を否定し、マスクがなくなったらバンダナをして仕事へ行けという指示があっただけです。

布製のマスクをするなら何もしない方がましだという一部の研究があるにもかかわらずです。本当にばかげています。政府も医療システムも中国で起きたことを知っていたのだから、早く準備を呼びかけるべきでした。台湾やシンガポールなど、事態を重く見た国々は1月から検査や隔離を始めていました。真剣に対応していれば、事態は変わっていたでしょう。

私も同僚も、感染があまりに早く広がり、重症化のリスクが高いことに不意打ちを食らっています。医者も看護師も、個人防護具の不足を重要な懸念材料の一つとしています。ハーバード大学の研究で、新型コロナウイルスは、エアロゾルで3時間は空中を浮遊することを強く示唆しています。それなのに、医療当局がそれを考慮していないことも重大な懸念です。多くの若い患者が新型コロナで死に至ると思ってもいませんでした。中国からの報告では、重症化するケースは既往症のある高齢者がほとんどだと思われたからです。

しかし、いま病院には若い患者が多くいます。このエリアでも健康な40歳で人工呼吸装置につながれた患者が2人以上います。1人はここから30分ほど先のカークランドの救急医です。カークランドは米国で初めて集団感染が始まった地域です。すべての患者が病院に来れば病院は全滅です。私はそのことを何度も考えてきました。それはいま迫っていて、事態は良くなるどころか悪化するからです。
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翻訳=パラ・アルタ

この記事は 「Forbes JAPAN 6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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