新型コロナと闘う米医師15人の証言(上)

Photo by John Moore/Getty Images


デーブ・チョクシ医師(39歳)

ニューヨーク州ニューヨーク
(アメリカ最大の公共医療システム、NYCヘルス+ホスピタルの副院長兼公衆衛生課主任、ベルビューでかかりつけ医もしている)

私はルイジアナ州で育ち、ハリケーン・カタリーナの後に同州の保健省に勤務しました。今の状態に一番近いのはその時の経験です。その時に学んだことが2つあります。まず、人々は危機的状況にあるとき実に並外れた成長をしていくということです。この病院で新型コロナウイルスの患者を世話する同僚の医師、看護師、その他の医療従事者はすでにそうなっています。しかしもう一つの忘れられない教訓は、貧困、病気、差別、その他の理由で社会から取り残されている人々が、こうした状況でますます置き去りにされてしまう、ということです。

私がもっとも心配しているのはこれです。新型コロナウイルスにかかった人だけでなく、間接的に影響を受ける人々、特に貧しい労働者階級のニューヨーカーについても考える必要があります。彼らはこの病気のせいで経済的困難に陥っています。私たちは市と協力し、食料や家賃など基本的なニーズに対応できるように調整しているところです。

この病気はこの上なく手ごわいですが、我々のチームも同じです。チームがこの挑戦に立ち向かうために必要なものを用意し、彼らの安全と士気に配慮することも私の仕事の一部です。私たちは過去にもニューヨーク市のエボラ熱、その前のハリケーン・サンディなど、さまざまの課題に立ち向かってきました。ベルビューの医師は2世紀以上も前からさまざまな試練に直面してきました。18世紀の黄熱病、19世紀のコレラ、そして20世紀のHIV/AIDSなど。見習うべき先代たちから困難に立ち向かう勇気をもらっています。

ブライアン・フォックス医師(57歳)

ワシントン州べリアン
(シアトル近郊にあるマルチケア緊急クリニックの外来治療医)

老人ホームに病気が広まったと聞き、これは大ごとだと認識しました。そこに来るぐらいなら、他の場所で比較的すぐ広がるのは避けられません。対策を立てている間中、この病気を「目に見えない敵」と言い続ける人もいました。でも目に見えないのではなく、良く知らないだけです。当時はどのような注意をすればよいのかわかりませんでした。具合が悪くなったり隔離されたりする医者を支援するため、私も追加シフトを余儀なくされています。

熱などの症状が数日続いている患者全員に検査して、回復期にいるかどうかを確かめられたらよいのですが、ラボでは途方に暮れているのが現状です。検査が多すぎてその一部はラボにたどり着きさえしません。それでも検査が限られているために問題が生じています。患者には感染している可能性があるから家へ帰って自主隔離してくださいとしか言えません。

いま以上に事態が悪化する余地は十分あると思いますが、政府がしたことで一番良かったのはソーシャル・ディスタンシングと外出禁止を布いたことでしょう。一つ見ていて素晴らしかったのは、地域が協力してお互いに助け合っていることです。最善の自分たちを見つけています。このことを忘れないでいたいと思います。
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翻訳=パラ・アルタ

この記事は 「Forbes JAPAN 6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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