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Photo by John Moore/Getty Images

1933年以来、3月30日は米国で医師を祝う非公式の祝日だった。1990年に、連邦政府が「医師を祝福する国家的記念日」にすると宣言、法制化された。2020年。米国中の医師たちが、気が付けばパンデミックの戦場にいる状況だ。今ほど、彼らを祝福するにふさわしい時はない。彼らの仕事に敬意を表し、米「Forbes」誌の3人が全国の小児科医や呼吸器科医、かかりつけ医など、さまざまな立場の医師にコンタクト。リーダーシップを持って、パンデミックと闘う15名の証言を聞いた(すべて3月30日現在)。2回に分けて紹介する。(2回目は『新型コロナと闘う米医師15人の証言(下)』

ジュリア・パリス医師(34歳)

ニューヨーク州ニューヨーク
(3週間以上にわたって新型コロナの患者の治療にあたっている救急医)

あまりに感染の拡大が早く、私たちは打ちのめされています。テレビで報じられている数字は正確ではありません。全員を検査できるわけではないからです。どこにいても感染する可能性があります。崖っぷちで踏ん張っていた患者が、あっという間に崖から落ちて亡くなってしまう現状を目の当たりにしています。インフルエンザや肺炎の患者とは全く違います。もっと早く拡散し、予想と異なり若くて健康な人も感染しています。

私の親しい家族も感染してるので、彼らのことも心配ですし、患者や自分自身も心配で、ものすごいストレスです。私はそれほど政治的な人間ではありませんが、この状況下では政治について話さざるを得ない。金持ち大国アメリカでなぜ配給制が起こっているのでしょうか。他国での戦争へ出向くために何兆ドルもの資金を軍隊に費やしているのに、いま自国で戦っている戦争にはサポートが足りません。病院にスペースがなくなるのも時間の問題です。

今は見舞客も受け付けていません。とても悲しいことです。人工呼吸器をつけた30歳の患者さんがいますが、彼は一人ぼっちで亡くなっていくのです。(感染拡大が)早く終わってほしいです。医療従事者として毎日仕事へ行き、信じられないほど具合の悪い患者の世話をし、医療物資がなくなる心配をし、皆から孤立しているように感じている、こんな生活をいつまで続けられるのでしょう。克服するには精神的にとてもきついです。これがどのぐらい続くのか誰もが懸念しているでしょう。

今もひどい状態ですが、状況はもっと悪くなっていきます。1日を何とか乗り切れるのは、家族や友人がメッセージや電話、食事などを送ってくれて、励まし、愛してくれるからです。スマートで思いやりのある仲間と仕事ができることに感謝しかありません。これからも毎日休まずできる限りの治療をするつもりです。

サミット・マッカージー医師(41歳)

ネブラスカ州オマハ
(メソジスト・ジェニー・エドマンドソン病院の呼吸器科医兼集中治療室の医長)

私は新型コロナの症状のある患者を診ています。彼らの多くは隔離されます。この地域で感染が広まっていることはわかります。ここ1週間ほど家族と離れて生活しています。家族は怖がっていてとても辛いです。何日か前、息子が電話をかけてきてきました。私が新型コロナに感染したという悪夢を見たと言うのです。その他にも、外来患者の多くもキャンセルしなければなりませんでした。ばく露のリスクがあるのと、私自身が忙しすぎるからです。パンデミックに備えるため、1日4時間を費やして病院の総務課と会議を行っています。病院に来る患者も著しく増加しており、計画や準備の時間を含めると忙しくて長い1日が続いています。でも、今後2、3週間後にやってくる事態に比べればいまは休暇中のようなものです。

びっくりするのは物資不足の現実だと思います。この種のパンデミックに対応するための準備が甚だしく不足しています。国全体でこの状況は歴然としています。我々は重い肺病患者に対処するトレーニングは受けていますが、システムの機能停止に対処するトレーニングは受けていません。患者に挿管するとき、人工呼吸器と適切な薬があるのが当たり前でした。正直に言うと、この状態が続いたとき一番心配なのは誰が助かりそうで、誰が助からないか、決断しなければならない事態になったときにどうするかです。私の人生の現時点までは、できることはすべてやったと言い切れます。前向きにいようと思います。しっかり準備をしようと思います。でも正直恐ろしい。これまで見たこともない状況です。

翻訳=パラ・アルタ

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