ビジネス

2020.04.15

データとの融合が導き出す、食ブランドの新たな可能性

MiL代表取締役の杉岡侑也


「デジタルを中心とする行動ハック」を専門とする会社は多く存在するが、それを自らのリアルな商品に落として込んでビジネスをしているところは意外と少ない。メーカーではこの多くを外注するのが当たり前となっている。だがMiLでは、机上の空論をデータドリブンにしていく、という。

日用品のシャンプーや美容については、ある程度の知識をみんなが持ち合わせている。だが“愛する我が子への初めての食事”という分野に関しては、常に進化していることもあり、最初は誰もが「正解」が分からない状態でスタートする場合が多い。

疑問を抱いて訪ねてくれる人が多ければ多いほど、それがMiLにとっては未来に向けての貴重なデータとして蓄積されていくこととなる。他のメーカーには入らない情報を得ることは組織の幹を更に強いものにしていく。「D2Cとは非常に相性が良い。デジタルという得意分野で日本の強さを活かした“モノ作り”をしていく」と杉岡も意気込みを語る。

個へのカスタマイズ 食ブランドの新たな可能性


大胆なチャレンジにも挑戦する。これまでのベビーっぽいブランド「Mi +ミタス」から新たなブランド名へと変える予定も考えているという。パウチのデザインも変え、LINEスタンプで活用できるキャラクターも誕生させる。さらには、顧客とのコミュニケーションを円滑にしていくためにキャラを企業の顔として起用する構想もある。このユーザーとの繋がりを強化することを優先順位の1番上に置く。

新たな商品の展開も予定している。乳製品、小麦、卵、砂糖、添加物、調味料を使わないミールバーも開発した。手に取って気軽に食べられるもの、データにより分かった「みんなが欲しい」とされているものを今後展開していく。「ヘルシー/エシカル、デジタル、パーソナライズ。この3つが今年しっかりやり切るところ」と杉岡は抱負を語る。

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パーソナライズの部分ではデータをテキスト、画像で登録してもらい、いつ生まれたのか、血液型などを知ることでより個人に向けたサービスが展開していけるようになる。もしかしたら青よりも白い器の方が赤ちゃんは食欲がアップするといった仮定をもしかしたら証明していけることになるかもしれない。

将来的にはパーソナライズの部分に置いて、新たな可能性を秘めたバイオテックの分野もある。元サッカー日本代表の鈴木啓太が代表取締役を務めるAuBが取り組む腸内細菌層に着目した。

「乳幼児の腸内細菌層は宝の山」と学会などでも発表されているが、そのデータの入手方法は困難を極める。だがMiLにはすでに多くの既存顧客がいるため、世界で誰も知らないことを顧客と一緒に明かしていくチャンスが目の前にある。データや新しいエビデンスを元に商品開発へと繋げ、自社の中で循環サイクルを生み出していくことができる。

そのデータをいずれは食品メーカーや周辺のライフスタイル産業へ提供する側となることでプラットフォーム作りにも着手していく未来もあるはずだ。

いろんな業界がデジタルハックされる世の中へ


各業界がデジタルへ移行して、データを集積することを武器とする企業は今後も増えてくるだろう。和菓子にデータが加わるとどんなものが生まれるのか。土台が違うだけで得ることの出来るデータもどんどん変わってくるだろう。今後は「設計が肝」と杉岡は語り、データ解析の仕組み作りが鍵となっていく。これまでは技術を使って仕事をしてきた者が今度はその技術を使って社会に貢献したいと思うようになると、杉岡氏も予想する。その1人が今回CTOとして加わる岡田だ。

さらにMiLは強力な支援者も多く存在する。その中の1人にはセリエAの名門・インテルを経て、現在はトルコ・スュペル・リグのガラタサライSKに所属する長友佑都氏も投資家としてMiLを支援。月に一度のミーティングを繰り返し、議論を重ねている。

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投資家としての長友氏を「初志貫徹、言動一致」と表現。投資をするかしないかの判断は儲かる軸ではなく、自らの思想に合う企業かをしっかり見極めていると、杉岡はその印象を語る。もちろん投資に見合い、金銭的な部分も考えているだろうがそれ以上のことをしっかり見てくれているという。「大丈夫だよ。いけるよ。の一言は本当に元気にしてくれます。」色んなことを乗り越えてきているキャリアだからこそ、長友氏からのいけるぞと言う言葉には響くものがある。

2018年に「ヘルスケア×フードテック」カンパニーとして創業し、「自分らしい人生を食から実現する」という大きなミッションを掲げてアジアでも注目される存在となった。今後、食と個人への追求がどんな次世代型の食品を生み出していくのか、楽しみな挑戦がまだまだ続く。

文=新川諒 人物写真=小田駿一

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