ポルシェの魂とエンジニアリングレベルの高さの結実

PORSCHE Tycan

電動化で何をかなえるのか。メーカーの姿勢が明確に表れるのがEVだ。なぜメーカーはEVをつくるのか? サステイナブルなクルマ社会のあり方を提示しながら、EVで未来のクルマ社会にどう貢献するつもりでいるのか。ユーザーはメーカーの姿勢を見ている。その厳しいまなざしに耐えうるコンセプトを実現するEVが増えてきた。


PORSCHE Tycan

技術の進化、という言葉はポルシェにぴったりだ。電気自動車の分野でも、2019年9月に早くも高性能スポーツモデル、タイカンを発表した。そのスピードにも驚く。

タイカンは前後に2基のモーターを搭載して、おもにバッテリーの出力で性能が異なる複数のモデルが設定されている。ポルシェファンならにやりとしてしまうのは、トップモデルの名称が「ターボS」であることだ。

ターボチャージャーは(ご存じのとおり)内燃機関が出す排ガスの圧力を利用してパワーを増すシステム。なので、BEV(バッテリー駆動の電動車)になぜ? と思うが、もはやポルシェのアイコンなのだ。シャレが利いている、ととらえればいいだろう。

タイカンは航続距離が最長で400km超と発表されているので、BEVの要件を満たしている。一方で、大容量のバッテリーを搭載したターボSは、静止から時速100kmまで加速するのにわずか2.6秒。全長が5m近く、セダンとしても使えるボディなのに、驚くほど速い。最大トルクが1050Nmで、車重は2295kgに抑えられている。このバランスもスポーツカーメーカーならではだ。

スポーツセダンとして楽しめるような新技術はぬかりなく採用されている。代表的なものはリアのトランスミッションを2スピードとして、強い加速時と巡航時で使い分けている点だ。

時速200kmまでの加速を26回繰り返しても、最初と最後のタイム差は1秒未満という。コンセプトから実車の発表まで時間をかけただけあって、エネルギーの制御技術が高いのだ。

ポルシェの日本法人ではディーラーにも急速充電器を置くなど、導入のあかつきにはユーザーの利便性も追求するようだ。ただし急速充電を繰り返すとバッテリーの寿命が短くなる。タイカンのオーナーなら自宅でゆっくり長時間充電を。時間をかけて付き合っていきたい。ポルシェはそういうブランドではないだろうか。


日本では、2019年11月から予約注文の受付を開始している。納車予定は2020年9月以降。ポルシェのブランド力をどのようにEVの分野で発揮するか注目を集めている。

この記事は 「Forbes JAPAN 2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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