radiko躍進の舞台裏──リスナーの声の可視化から見出した、3つの役割

radiko業務推進室長 坂谷 温氏


radikoが力を入れる「整理」の可能性


「貯める」に加え、これからradikoが注力するのが「整理する」ことだ。たしかに、データによってラジオのあらゆる情報が可視化されれば、整理がしやすくなるのは想像に難くない。坂谷氏は加えて、スマートスピーカーの普及にも言及する。

坂谷氏「一昔前は、ラジオ受信機がついたオーディオ機器がリビングにあり、家族でラジオを聴きました。しかし、今ではオーディオ機器は家になく、スマートフォンやPCなどパーソナルな環境でラジコを使う人も多い。この状況を変えつつあるのがスマートスピーカーです。

radikoはすでにAmazon Alexa、LINE Clova、Google Homeにも対応しています。スマートスピーカーは、各家庭のリビングに置かれることが多い。一度、家庭の中心から消えたラジオがリビングに戻り“ラジオを聴く”という原体験を次の世代に作る上で、スマートスピーカーは重要な接点なんです」

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スマートスピーカー時代のラジオを考えるとき、鍵となるのはユーザー体験だと坂谷氏。特に注力すべきは、音声指示への柔軟で適切な対応だ。

坂谷氏「現状では、『OK Google、◯◯(ラジオ局名)をかけて』といった具体的な固有名詞がラジコの起動に必要です。これは、放送局や番組の名前がわかる人でないと使えません。もっと曖昧な指示やキーワードでの起動が体験としては重要なんです」

この実現に必要なのが「整理」だ。スムーズな番組検索や提供には、番組を分析し、細かく多様なキーワードの抽出が必要になる。番組やトピックごとキーワードを設定できれば、これまで局や番組単位でアーカイブしていたコンテンツを、より細かな単位に分割できる。すると、従来の「局」や「番組」「編成」という枠にとらわれず、届けられる。

坂谷氏「例えば、トークテーマや特定の話題で検索できれば、接するハードルも下がりますし、ある話題に関する地域やパーソナリティごとの意見を比べられます。『◯◯についての意見が知りたい』『◯◯の情報をまとめて聴きたい』といった指示にも柔軟に応え、番組内の聴きたい部分だけを抽出した提供も可能になるかもしれません」

また、整理が進めば「パーソナライズ」にも活用できる。「このトピックやジャンルに関心のある人は、この局やこの番組もおすすめ」といったアプローチも可能になる。「そのユーザーが一番欲しい情報を、よりダイレクトに届けられるようになる」と坂谷氏も語る。能動的に番組を探さない層にとっても、未知の良質なコンテンツとの出会いを生み出せるかもしれない。

近しい機能としては、2018年よりオーディオアドの実証実験をおこなっており、音声広告をパーソナライズして配信する仕組みも整えている。個々に最適化されたコンテンツ提供の可能性も、徐々に見え始めているといえるだろう。
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文・取材=葛原信太郎|編集=小山和之|撮影=須古恵

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