再現でなく、より良い社会を。デンマークからポストコロナの世界について

コペンハーゲンの観光名所の一つ、ニューハウン。ほとんどの店が閉まっており観光客は全くいない


その背景には、このコロナショックで多くの人が職を失うという事実がある。残念なことにデンマークでは、コロナとの戦いで、国民の約1%にあたる5万人の人が仕事を失うと試算されている。そうした人々の新たな雇用を生み出すために、環境問題の解決につながる事業により投資が行われるようである。

具体的には、下記の提案関連で、今後約3万人の雇用を生み出す予定になっている。

・既存住宅のさらに省エネにつながる断熱改修工事への大幅な投資
・ごみ焼却場やバイオマスを利用した熱から得る地域熱供給への減税措置
・ヒートポンプの推進
・環境関連の研究に対する投資
・石炭利用の段階的な脱却とそれに代わる二酸化炭素削減につながる代替エネルギーへの転換にかかる投資
・風力、太陽光など再生エネルギー事業への投資
・電気自動車の促進、エネルギーチャージステーションの増設
・環境に関わるスタートアップへの投資
・二酸化炭素削減が期待される路面電車事業の促進

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電気自動車の為のチャージステーションの例。「車=排気ガス=環境汚染」という今までの考え方ではなく、「電気自動車=環境に良い」というイメージを湧き出させるイメージのステーションがこれから多く作られる予定だ。写真:Rasmus Hjortshøj (COAST)、プロジェクト:COBE

多くの環境関連の提案には、今後もデンマークは、環境先進国として進んでいくというポストコロナの世界を見据えた明確な解答が示されている。またこのような、長期持続可能な街づくりのための投資は、さらに多くの投資家にとっても魅力的に映るだろう。

自粛活動で得るものは何か?


自粛が続くコペンハーゲンの市内には普段の人通りがない。静かな運河沿いを歩いてみる。連年ならば、この時期の運河はボート遊びを楽しむ人や観光船でにぎわっているはずなのだが、今はまったく船の行き来はない。

そのせいか、運河の水がいつもよりも澄んで見える。小さな魚が太陽に反射してわずかにキラキラして見える。4週間の自粛は経済的な大きな負担とはなるが、ポジティブな要素というのも必ず見えてくる。

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運河にも船は全くいない。水が澄んで運河の底が見えるところもある

日本はこれから自粛が一層強まる段階だ。ライフスタイルの変化を受け入れ、未来に向けた新しいビジネスも色々と考えていかなくてはいけない段階である。その過程において、デンマークに限らず、日本の少し先を行く世界の国々から学ぶべきところは多いはずだ。ポストコロナを見据えては、現状と同じ社会の再現でなく、よりよい社会をスタートさせるようになればよいと思う。

連載:コペンハーゲンでいい空気吸おうぜ
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文=蒔田智則

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