英国が独自開発の感染追跡アプリ、アップルやグーグルも協力

Photo by Hollie Adams / Getty Images

英国政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた新たな取り組みをアナウンスした。4月12日、マット・ハンコック保健相は英国のNHS(国民保健サービス)が独自に開発した、感染者を追跡するアプリを間もなくリリースすると発表した。

「新型コロナウイルス感染症を発症した人はまず、このアプリに情報を入力する。すると、アプリは過去数日間に、その人物と接触を持っていた人々に、匿名でアラートを発信する。これにより、感染した可能性がある人々に適切な対処を促せる」と、ハンコック保健相は述べた。

同様なアプリは既に他の諸国でも導入され、感染の拡大を防いでいる。この仕組みを用いれば、無症状の人々がウイルスを拡散することも防止できる。ただし、個人の行動履歴を蓄積するシステムは、プライバシー上の懸念を生じさせる。

イギリスの国民保健サービスであるNHSは、クオリティの高い医療を無料で提供し、人々から高い信頼を獲得している。アプリの導入にあたり、彼らは細心の注意を払おうとしている。

NHSのテクノロジー部門のNHSXは、アップルやグーグルと共同でブルートゥース技術を活用するアプリの開発を進めてきた。ハンコックによると、開発にはデジタル倫理の専門家チームも参加したという。

さらに、運用にあたっては、プライバシーの問題と並んで、このアプリが果たして実際に機能するかどうかという問題もある。「利用者が多ければ多いほど、より有意義な情報提供が可能になる」とハンコックは説明した。つまり、人々がアプリをインストールしなければ、この試みは無駄に終わることになる。

複数の専門家が、このアプリが威力を発揮するためには、英国の成人の60%がダウンロードし、登録を行う必要があると述べた。それが実現できた場合、感染者の行動を記録し、アラートを発信し、自己隔離を促すことが可能になる。

プライバシー上の懸念についてハンコックは、「全てのデータは、倫理的にもセキュリティ的にも最高レベルの基準を満たす形でやりとりされ、NHSのみがアクセス可能になる」と述べた。さらに、データが保管されるのは期間は限られており、透明性を維持するためにアプリのソースコードは一般公開されるという。

英国での死者は1万人を突破


「我々は既にこのアプリのテストを重ねてきた。世界をリードするテクノロジー企業や、デジタルの倫理及びセキュリティの専門家の協力を得て、プロジェクトを進めている」とハンコックは続けた。

ハンコックが今回の試みを発表したのは、英国での新型コロナウイルスによる死者が1万人を突破したタイミングだった。感染者は既に7万8000人を超えており、そのうちの一人であるボリス・ジョンソン首相は数日間を病院の集中治療室で過ごした後、退院した。

英国を代表するコメディアンのティム・ブルックテイラーは、4月12日、新型コロナウイルス感染症により亡くなっていた。

今後の数週間以内にリリースされるNHSのアプリは、英国が新型コロナウイルスと戦う上での有効なツールとなるはずだ。英国全土に広がるロックダウンを、なるべく早く解除させることにも、つながるかもしれない。

編集=上田裕資

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