ビジネス

2020.04.15

メルトダウン迫る米ショッピングモール業界

Photo by Neal Waters/Anadolu Agency via Getty Images

数年前、メディアは「小売業の最後の日(リテール・アポカリプス)」を盛んに書き立てた。だが2020年、世界は見ての通りの状態になっている。もし、小売業の最後の日というものを私たちが目にしたことがあるのだとしたら、これこそまさにその光景だろう。

9日に発表された最新の失業保険申請数に基づくと、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で、米国では労働人口の1割が職を失っている。小売業界でも百貨店のメーシーズからディスカウント店のTJマックスまで、各社が大勢の従業員を一時帰休または無期限のレイオフにしている。

今回の危機の前には、米国では4人に1人が小売業界で働いていた。今ではそれはどうなっているだろう? 金融大手のJPモルガンによれば、米国の失業率は20%にまで悪化する恐れがあるという。

ショッピングモール業界にも痛みがさらに広がっていきそうだ。入居しているテナントは、今後何週間も休業を余儀なくされるからだ。モールの中核テナントである百貨店チェーンのなかには、売り上げの急減や流動性の枯渇によって、破綻に追い込まれる店も出てくるかもしれない。

実際、米モール運営最大手のサイモン・プロパティー・グループは、すでに従業員の一部を一時帰休させている。

モール運営会社の多くにとって重い問題となっているのが、テナントとの賃料交渉だ。報道によると、飲食店のチーズケーキ・ファクトリー、シェアオフィスのウィーワーク、オフィス用品店のステープルズを含む数十社が、営業休止に伴い、4月の賃料を支払わない意向を明らかにしている。おそらく、それよりはるかに多くの小規模店も賃料を払わないだろう。

中小企業の賃金や賃料の支払いを支援するために、米政府は3500億ドル(約37兆6000億円)規模の融資制度を設けた。ただ、その融資の実行には遅れが出ているとみられ、現時点では明らかに役に立っていない。

一方、ウイルスを理由に賃料の支払いをやめるのは不当だと訴える不動産業者もある。リレーティッド・カンパニーズの最高経営責任者(CEO)、ジェフ・ブラウはCNBCの番組で、同社の物件では4月1日期限の住宅賃料は88%、商用ビルの賃料は95%が支払われたのに、小売りテナントで支払ったのは全体のわずか26%だったと明かし、今回のウイルス禍は「人々が賃金を支払わない口実にはならない」と強調している。

モールの所有者も支払いを抱えているので、焦りを覚えているのは同じだろう。十分な資本を持っていない業者は、不動産ローンを払えなくなるリスクが高いだろうし、融資元に物件の鍵を渡さざるを得なくなる業者も出てくるかもしれない。

全米には現在、およそ1100カ所に上るモールがあり、新型コロナウイルスの流行前から小売店は過剰だった。多くのモールはもともと閉鎖される運命にあったが、今後、そのペースは加速していくことになるだろう。

編集=江戸伸禎

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