介護施設を襲う、新型コロナウイルスという悪夢

Photo by John Tlumacki/The Boston Globe via Getty Images

新型コロナウイルスのパンデミックは、介護施設のスタッフ、入居者、その家族にとって悪夢そのものだ。また、それよりも情報は少ないが、介護付き住宅(ALF)などの高齢者向け在宅介護サービスも、同様の状況にあると考えられる。

米国疾病管理予防センター(CDC)によると、3月30日の時点で、米国内15000か所の介護施設のうち400以上で、新型コロナウイルスの集団感染(入居者、スタッフ、または両方)が発生した。しかし、報告されたケースは氷山の一角であり、実態はさらに深刻である可能性が指摘されている。

介護施設での集団感染について情報を開示している州は少ないが、そのうちのひとつミネソタ州では、4月4日の時点で42施設で集団感染が発生している。人口あたりの感染率が他州と比べ相対的に低いミネソタでさえ、この数字なのだ。

スタッフの感染


「マクナイト長期介護ニュース(McKnight’s Long-Term Care News)」の報道によれば、調査した介護施設の半数近くで、スタッフが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症していた。勤務する職員は、マスク、手袋、ガウンの不足に直面しており、状況は病院よりも深刻なようだ。ほとんどの施設にはまだ検査キットがなく、スタッフ、患者、入居者の検査が進んでいない。

連邦政府は介護施設に対し、資格取得前の看護師を補助要員として採用することを認めた。こうした経験の浅い直接ケア要員が、きわめて困難な状況のなかで働くことになる。残念ながら、彼らがミスを犯す確率は高い。

加えて現在、介護施設の通常業務の多くが停止している。ひざや股関節の置換手術を受けた患者のリハビリは、こうした施設の大きな収入源のひとつだ。しかし、全国的に待機手術(緊急でない手術)の実施が禁止されている今、リハビリも事実上の停止状態にある。

高い死亡リスク


長期介護施設の入居者は、新型コロナウイルス感染症の重症化・死亡リスクが最も高い人々だ。高リスク群の特徴のひとつである、心疾患、肺疾患、糖尿病、免疫不全などの基礎疾患を抱える人が多い。

さらに悪いことに、多くの施設には、感染拡大を促進する環境が揃っている。入居者とスタッフが、デイルームや食堂に集合する。スタッフは入居者のあいだを歩きまわり、その際にはしばしば防護装備を一切つけていない。家族ではない複数の入居者が同室になることも多い。特に、メディケイド対象の低所得者層では顕著だ。

環境はここ数週間でかなり改善されたが、すでに集団感染の被害が出てしまったあとだ。

感染拡大を防ぐため、プラスチックシートで感染者と非感染者を分けるくらいしか対策をおこなっていない施設さえある。一部の経営者は、施設から多数の遺体をどう搬出するかという、これまでは想像もできなかった難問と格闘している。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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