介護施設を襲う、新型コロナウイルスという悪夢

Photo by John Tlumacki/The Boston Globe via Getty Images


遅きに失した、お粗末な対策


集団感染を防ぐため、介護施設は何週間も来訪者の立ち入りを禁止している。今後数か月は継続されるだろう。家族も友人もボランティアも建物に入れない。入居者の権利を擁護する、州のオンブズマンも同様だ。連邦政府は、新型コロナウイルス感染症の治療と感染抑制にリソースを集中させるため、介護施設の定期調査を停止した。

新型コロナウイルス対策のほとんどがそうなのだが、連邦政府が介護施設の危機的状況に対して打ち出した策は遅きに失しており、内容も乏しい。

メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は4月3日、介護施設向けの新型コロナウイルス対策ガイドラインを発表した。しかしその内容は、施設と自治体当局への提言でしかなく、新たなリソースを提供するものではなかった。

例えばCMSは、同センターは「州および自治体の長に対して、長期介護施設のニーズ、とりわけ個人用防護装備(PPE)と新型コロナウイルス感染症検査キットの供給を検討するよう要請」したと述べている。さらに、「介護施設はすべてのスタッフに対し、患者や入居者と接触する際の適切なPPE使用を徹底させるべきである。この対策については、手に入るPPEに合わせて行われるべきであるし、PPEの枯渇化防止に関してCDCが定めるガイダンスにも沿うべきである」としている。しかし、そもそもマスク、手袋、ガウンがないのに、一体何をどうしろというのだろうか?

さらにCMSは、介護施設において新型コロナウイルス感染症患者とそれ以外の入居者を指定区画に分けることを推奨している。だが、そのための物理的スペースや資金力がない施設はどうすればいいのか? 

CMSは、こうしたキャパシティ不足の施設の閉鎖や、非感染者の移送を命じる権限をもっているが、自身が何をするのかについては書かれていない。

死亡率20%


AP通信は4月2日、全米の長期介護施設で2300人の感染が確認され、うち450人が死亡したと報じた。20%近い、恐ろしい死亡率だ。介護施設に常駐する医師のなかには、最終的に入居者の3人に1人が新型コロナウイルス感染症関連の疾患によって死亡すると考える者さえいる。

ニューヨーク州とニュージャージー州の知事は、病院への過度な負担を軽減するため、設備の整った介護施設に対して、病院を退去させた軽症の新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを命じた。しかし、大規模な検査体制と、(おそらく不可能だが)患者を隔離する能力がないかぎり、介護施設側からすれば、今いる非感染者へのリスクを上げるだけだ。自治体単位で特定の施設を新型コロナウイルス感染症陽性患者の受け入れ専用に指定する方が、対策としてすぐれていると言えるだろう。

介護施設や介護付き住宅は現在、史上最大の危機に直面していると言っても過言ではない。スタッフ、入居者、その家族の肩には重圧がのしかかっている。

翻訳=的場知之/ガリレオ

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事