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THE TRUTH

Jリーグ村井満チェアマン(Masashi Hara - JL/Getty Images)

世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスのあおりを受けて、日常生活のなかからサッカーの灯が消え去って久しい。

他のプロスポーツに先んじて、2月下旬からすべての公式戦を中断および延期しているJリーグは、4月に入って緊急事態宣言が出されるなど、予断を許さない状況が続くなかで、再開計画も二転三転、いま現在は白紙状態に戻されている。

未曾有の事態に見舞われるなかで、ビジネスマン時代から組織運営に対する首尾一貫した哲学と、臨機応変さとを併せ持つ第5代チェアマン村井満氏(60)のリーダーシップは、先が見渡せない荒海を進んでいく羅針盤となっている。

誰も経験したことのないこの状況下で、踏襲すべき前例は存在しない。組織のトップに求められるのは、さまざまな情報を迅速に取捨選択して、迷わずに実行に移せる決断力。「胆力」と表現してもいいだろう。

評価される意思決定の速さ


今シーズンの公式戦をスタートさせた直後のJリーグが、突然の中断および延期に踏み切ったのは2月25日の午前中だった。対象はナイトゲームで、翌26日に行われるYBCルヴァンカップのグループリーグ第2節の8試合。アウェイクラブが遠征へ出発するギリギリのタイミングだった。

国内における主要なプロスポーツの興行が延期される初めての事態は、Jリーグ規約で権限として定められている「チェアマンによる判断」を介して生まれた。24日深夜に行われた、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の緊急記者会見の光景が、村井満チェアマンに決断を促すことになった。

会見では、「この1、2週間が、感染拡大のスピードがあっという間に増すか、ある程度抑制できるかの極めて大きな瀬戸際になる」という発言があり、警鐘にも近い言葉を重く受け止めた村井チェアマンは、一夜明けた2月25日になってすぐに動いた。

「昨日からステージがひとつ変わった、という認識をすべてのクラブで共有しました。極めてイレギュラーで、なおかつ緊急な意思決定でしたが、明日のルヴァンカップから日程を変更し、政府の取り組みに、サッカー界およびJリーグとして、最大限の協力していくことを全会一致で確認しました」

村井チェアマンは、J3までを含めた、56を数えるJクラブの代表取締役、あるいは理事長が務める実行委員と、緊急のウェブ会議を実施。その場でルヴァンカップの延期を決めて、午後に開催した理事会で事後報告。さらに3月15日までの公式戦86試合の延期も提案して承認を得た。

再開目標を3月18日としたのは、政府見解の「1、2週間」の長いほうに合わせたものだ。しかし、いまは白紙状態となっている。

白紙に戻す意思決定が下されたのは4月3日。日本野球機構(NPB)に呼びかけ、共同で設立した新型コロナウイルス対策連絡会議に出席した村井チェアマンが、当初は予定になかった実行委員会を午後にウェブ形式で緊急開催。全会一致で合意に達したものだ。

新型コロナウイルス対策連絡会議では、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染制御学)を座長とする3人の専門家チームを毎回招いている。さまざまな助言や提言を受けて組織へ持ち帰り、判断材料のひとつとしてきたなかで、第5回会合では様相が違ったという。村井チェマンが語る。

「従来は『どのような点に留意すれば、公式戦を再開できるのか』が議論の中心だった専門家チームのトーンが、明らかに変わっていました。なので、私のマインドもいったんリセットするタイミングとなりました」

文=藤江直人

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