ビジネス

2020.04.15

目指す世界が同じなら連携すればいい。食系スタートアップによる飲食店救済プロジェクト

フードロス削減サービス「TABETE」


TABETEの連携は、これだけに留まらない。

27日には、RYM&CO.が手がける定額制テイクアウトアプリ「POTLUCK」、DIRIGIOのモバイルオーダー&ペイアプリ「Picks」と手を組み、さらなるプロジェクトも始めた。

3社の共通テーマは「テイクアウト」。「#テイクアウトしよう」を付けて投稿された店舗やメニューの情報をTwitter上で拡散し、テイクアウトの情報発信が追いついていない飲食店をサポートする。

もちろん、これらは積極的な外出を推奨するものではない。しかし、緊急事態とはいえ、食料の調達や日用品の買い出しなどは生活に不可欠だ。気軽にテイクアウトを利用できるよう、つくり手と食べ手をつなぐ。

広がりを見せる、テイクアウトの動き。一方で、飲食店からのレスキュー要請は増すばかりだ。3月にTABETEを通じて出品された廃棄ロス予備軍の数は、前月比で1.8倍に増えたという。

そんななか、TABETEは大きな決断を下した。レスキューの対象を「食品ロス予備軍」から「食事をつくる店や、そこで働く人たち」に広げたのだ。

コミュニティを育んできた店はつぶれない


4月10日に新たに開始した「お店もレスキュー!プロジェクト」の柱は3つある。食品ロスのあるなしにかかわらず、店がすべての商品を出品できるようにすること。これまであった680円という価格上限の一時廃止。そして展開エリア外の店舗の受け入れだ。いずれも6月末までの限定措置としながらも、状況によっては期間延長も視野に入れているという。

飲食店を救わずして、日本の豊かな食生活はありえない。そして、飲食店が生き残るための鍵は「ファンによるコミュニティ」にあると川越氏は言う。

「持久戦になると、資本力のあるところが生き残り、そうでないところが淘汰されていかざるを得ない。でも一方で、リアルなコミュニティを丁寧に育んできたお店はつぶれないと僕は思っています。その店がなくなると困ると思うファンが大勢いるはずだから」

現実は甘くない、そう思う人もいるだろう。

だが、新型コロナウイルスで、私たちはいま、これまでの習慣や常識を根本から見直す時期に差しかかっている。「新しい仕組みが必要だ」と言っているだけでは、残念ながら世の中は変わらない。小さくてもアクションを起こす。目指すゴールが同じなら連携してみる。1人の力は僅かでも、集まれば不可能を可能にできるかもしれない……。

そんなことを考えていた日の夕刻、スマホの画面上にメッセージが届いた。

「レスキュー依頼が届いています」

それは、TABETEに登録している飲食店からの、食品ロス予備軍を救ってほしいという緊急要請だった。「今日は行けないな」と思いながらもアプリを開き、何げなく「現在のレスキュー」タブを押すと、「おや? レスキューの記録がありません」のメッセージとともに、“レスキュー隊”がおにぎり3つを担架で運ぶイラストが現れた。

そのユーモラスな姿に、ふっと心が和む。そして、サービス開発を手がける伊作氏の言葉を思い出した。

「ポジティブさとか、未来に希望を持つことを何より大事にしている。『頑張る』のではなく、生活者にとっての持続可能性を考えたうえで、日々のサイクルの中に仕組み化できるかどうかが僕たちの挑戦なのだろうと」

誰にも先が読めない状況下で、頑張りすぎると苦しくなる。ならば視点を少しずらして、自分が楽しめる方法を探してみよう。テイクアウトで新しい店を開拓するのもいい、初めてのメニューを試すのもいい。

そして地域の飲食店とつながり、「お互い何とか踏ん張ろう」と声を掛けながらこの困難を乗り切った先に、「コロナ前より元気なコミュニティになった」と笑える日が来るかもしれない。

文=瀬戸久美子

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事