確かに、新型コロナウイルスの影響で我々の生活は一変したが、見えてきたのはネガティブなものばかりではない。スポーツ選手による家でできるエクササイズ、絵本の読み聞かせなど、みなそれぞれの立場でできることを形にしている。いま“善意の輪”が動き出しているのだ。
カスタムサラダの人気店が形にしたシンプルな熱意
クリスプ(東京都渋谷区)は、日本で馴染みの薄かったチョップドサラダ(野菜を細かく刻んだスタイル)と、メニューをカスタムできる仕組みで人気のお店「クリスプサラダワークス」を運営する。現在、都内14店舗、そしてデリバリーもできるが、現在、すべての店を閉めている。それは、ある試みに注力するためだ。
「不眠不休で動く医療従事者のみなさんに私たちができることはないのか」
同社は、新型コロナウイルスと闘うすべての医療従事者と病院勤務者に『サラダの無償提供』をはじめたのだ。カスタムサラダという事業で、また外食業界の一員として、店のポテンシャルのすべてをこの試みに注ぐ。同社代表取締役・宮野浩史に、その真意を聞いた。
外出自粛要請を受けてインタビューはTV会議で行った。熱く語る宮野の「熱」は画面越しでも伝わってくる。
6日間で2296食のサラダを無償提供
サラダの無償提供は宮野の一声で始まった。3月25日にサービスを開始すると、6日間で2296個(4月14日現在3747食。同社運営店「R PIZZA」での無償提供を含む)が医療関係者に届いたという。
「世界中の多くの方が不安を抱えている時だからこそ、最前線で働く医療従事者への支援が大切だと考えました。医療の現場は感染のリスクにさらされ強い緊張感に包まれています。国民の不安と対峙しながら献身的に診療を行う日々をおくる医療従事者の方に、少しでも喜んでもらいたい」
仕組み化? ロジスティクス? それよりも宮野はまず思いを優先し実行した。すでにお客さんだった医療関係者、SNSを通じたつながりを起点に、医療関係者たちに応えたのだ。人気のサラダは確実に医療関係に届き多くの喜びの言葉をもらったという。
支援の喜びもさることながら、当事者たちにとっては戦場での戦闘食たる食事が、お腹いっぱいのサラダというのは本当に嬉しいにちがいない。