このタイミングで小池都知事と対談。時宜を得たユーチューバー、HIKAKINの本質

ユーチューブ上で対談した小池百合子都知事とHIKAKIN(Getty Images)

「やるべき時にやるべき場所にいてやるべきことをいう。言うべき時に言うべき場所にいて言うべきことをいう。それが難しいんです」

こう語ったのは、「人間探究科」「自然探究科」を京都市立堀川高校に開設し、国立大学への合格者数を1年で100人以上増やした「堀川の奇跡」の渦中にいた荒瀬克己校長だ。正しいタイミングというものは、誰にとっても難しいものである。

小池都知事とユーチューブ対談、若い世代を意識


そこでHIKAKINだ。新型コロナウイルス感染症が広まるなか、トップユーチューバーHIKAKINが東京都の小池都知事とユーチューブ上で対談した。13日現在で約880万回再生され、45万件の好評価を得ている。この対談はHIKAKINからの打診に小池都知事が応えるかたちで実現。収益化を目的とせず広告なしで見ることができるため、拡散しやすいかたちとなっている。

質問内容は、「新型コロナウイルスの感染が拡大している中で何ができるか?」「発熱したらどうすればいいか?」「若い世代はどんなことに気をつければいいのか?」「日本で若者の重傷者は出ているのか」といった、若い世代が気になる内容が中心。自身が影響を与える世代を意識してのことだろう。

また、小池都知事も冒頭から、「HIKAKINさんがユーチューブで『3つの密』のことを仰っていただいて、それがすごくみなさんに見ていただいている」と語りかけるところから始まった。朗らかな一面をのぞかせると同時に、質問に対しては正確な数字を伝えることに終始した。危機をあおることなく淡々と回答した。

この動画の小池都知事に対しては、「笑顔や手を振るシーンもあり、硬すぎにほっこりした」「TVよりも印象がいい」「親近感がもてた」といった好意的なコメントが目立つ。

「何よりも運が良かった」謙虚な姿勢


HIKAKINといえば、言わずと知れたトップユーチューバー。しかし、以前、Forbes JAPANに語った成功の理由については、「何よりも運が良かった」と謙虚な姿勢だった。それこそが、彼らしい部分でもあるのだ。ビートボックス動画で世界中からのアクセスを得てユーチューバーとなったHIKAKINではあるが、その影響力を元にテレビに本格進出、ということは今のところなさそうだ。それは制作方法にあって、ひとりで企画から撮影、編集まで何でもできるメディアが合っているというからだ。元々は恥ずかしがり屋で、人前で何かを話すことを避けてきたという背景も影響しているのだろう。

成功の理由は運であっても、自身の言葉の影響力は無視できなくなってきた。動画で紹介した商品が店頭から消え、工場が生産に追われることもでてきた。だからこそ、動画の企画は丁寧に扱う。

「商品レビューでは、『まずい』と言わないと決めています。まずいと思ってしまったなら、たとえ動画を撮り終えていてもボツにしますね。本当に自分がおいしいと感じられたものこそ、みんなに伝えるべきだと考えているので。結果としてそのほうがみんなハッピーになれると思います」

みんなをハッピーな気分にさせる、これこそがHIKAKINの本質ではないだろうか。

前出の言葉にもどる。「やるべき時にやるべき場所にいてやるべきことをいう……」。HIKAKINの本質からすると、このタイミングでの小池都知事への対談は必然だったと言えるだろう。収録後には「緊張した〜」と本音をこぼすシーンもあったが、TVを見ないと言われる若い世代には、自身の動画が効果的とふんだ。広告未掲載も純粋に拡散を願ってのことだろう。

今回の動画のなかに何度も出てきた「#うちで過ごそう」。我々にもこのタイミングでできることがありそうだ。

文=上沼祐樹

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事