ビジネス

2020.04.15

農家の勉強会が生んだ新風「有機酒」

天鷹酒造

小さな酒蔵はどこに活路を見出すか。3代目蔵元である尾崎宗範氏が、県内の酒販店や日本酒愛好家、農家らと勉強会を重ねるうち、たどり着いた結論は「地元の米で作った安全・安心な」有機日本酒づくりだった。

有機の定義もまだきちんと定まっていなかった95年に発足したプロジェクトはまず米づくりから。有機米を栽培するには田を2年間無農薬・無化学肥料栽培に転換し、3年目に生った稲の種子から収穫できた米が初めて“有機”を名乗ることができる。米農家にとっては転換期の収入が担保されないため敬遠されることも多いが、尾崎氏の熱意に打たれた米農家が有機栽培による原料米の生産を担い、05年から有機日本酒づくりをスタートさせた。


酒蔵内で有機酒をつくるラインは完全に隔離されている。

現在は貯蔵方法や設備機材、清掃に至るまで定められた基準を満たすことで、天鷹酒造の有機日本酒は日本のJASをはじめ、米国、EUの有機認証を取得している。


日・米・欧の有機認証が記された「有機純米酒 天鷹」

「いまはまだ5%に過ぎない有機酒の生産ですが、いずれ全量を有機でつくるのが夢。有機日本酒造りを皮切りに有機農業を拡大することは環境負荷を低減するだけでなく、有機農産物や有機食品へと可能性を広げ、地域活性化につながると感じています」

天鷹酒造のサステナブルな酒づくりが日本酒業界に新しい息吹をもたらすことに期待したい。

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天鷹酒造代表取締役社長 尾﨑宗範

photographs by Kenta Yoshizawa text and edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN 4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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