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2020.04.21 09:00

「ロボットのシェアリングエコノミー」 RaaSの概要と事例

Willyam Bradberry/Shutterstock.com

クラウド型ソリューションが主流になる中、必要な時に必要な分だけ「ロボット」の機能を利用するRaaSが注目を集めている。

従来、導入ハードルが高いとされてきたロボットを、クラウドテクノロジーと連携することによって、最小限のコストかつ必要な機能のみ使用可能なRaaSは「ロボットのシェアリングエコノミー」とも言われている。

ここでは、RaaSの概要と魅力について事例を交えながら解説する。

RaaSとは「ロボットの機能をクラウド経由で提供するサービス」


「RaaS」とは、「Robot as a Service」の略語であり「ロボットの機能をクラウド経由で提供するサービス」の総称である。

従来、ロボットは「所有」が前提だった。生産性を向上させ、大量生産を可能にするために、工場では産業用ロボットを導入して作業効率化を図っていた。

しかし「RaaS」では、所有せずに一定期間レンタルしたり、ロボットの制御用ソフトウェアをクラウド経由で利用したりすることが可能となる。

近年では、ロボット技術の発達により、様々な領域においてロボットを導入する機運が高まっているのは周知の事実だろう。しかし、ロボットを導入するためにはロボット本体はもちろん、周辺機器やシステムインテグレーションにかかる費用を含めると、初期導入コストが非常にかかる。

「RaaS」では資金が潤沢にある大企業しか導入できなかったロボットを、クラウドを介して自社に合ったロボットソリューションを選び、活用できる。

さらに、使用量に応じた従量課金や定額課金のため、初期導入コストがかからない。そのため、これまで導入ができなかった中小企業のロボット活用に大きく貢献している。

クラウドが一般化し、インターネット経由でサービス提供する「XaaS」(X as a Service)を提供する企業が増加するにつれ、「買い切り型」から「サービス型」のソリューションへ移行する流れも加速している。

ことRaaSに関しても、AIやIoTによりテクノロジーが進化し、あらゆるものがサービス化する時代背景に沿うように使われ始めた言葉だ。

現在では、主に2つのRaaSによるビジネスモデルが確立されている。まず、ロボットの利用分だけ料金を支払う従量課金モデル。もう1つは、ロボットそのものを貸し出すモデルだ。どちらも他のクラウドサービスと同様にサブスクリプションで提供されるのが特徴となっている。

業務効率化や人手不足解消のために、RaaSソリューションを導入する企業も増える中、次項ではRaaSを牽引する企業を紹介しよう。


RaaSで注目される世界の企業4社


Savioke


「Savioke(サヴィオーク)」は米国カリフォルニア州にあるロボットベンチャー企業。主にホテルや工場、病院など、人から人へ物を運ぶ際のソリューションとして、自動走行デリバリーロボット「Relay」を提供している。

ロボット導入から保守、各種サポート、メンテナンスまで1つのパッケージとしてサブスクリプションモデルで提供するRaaSサービスだ。

利用した分だけ費用が発生するため導入ハードルが低い。また、クラウド上で管理できるので、稼働状況の見える化に繋がり、無駄なコストがかからずに済む。

日本の森トラストやリクルート、NECネッツエスアイらも出資をしており、国内での導入事例が増えている。RaaS領域において注目すべき企業だろう。

German Bionic


「German Bionic(ジャーマン・バイオニック)」はドイツのロボット製造メーカー。産業用パワースーツの「Cray X」は、直接体に装着することで、作業現場での事故や怪我のリスク軽減に役立つ。

2018年に日本市場へ参入し、19年8月より同製品を6か月または12か月のレンタルプランを開始。6か月プランは月額14万9000円から、12ヶ月プランは12万4000円から導入でき、定期メンテナンス料込みのRaaSを提供している。

まずは試用期間としてCray Xを導入し、効果の有無によって継続するか否かを判断できるのはRaaSならではのメリットだろう。

これまでは、ビックカメラの物流施設への導入実績があり、今後は作業者の負担軽減や健康サポートの文脈から、重量物を扱う業界に広がりが予想される。

コネクテッドロボティクス


コネクテッドロボティクスは、2014年に設立された調理ロボットサービスを提供する企業だ。人手不足や長時間労働など、飲食店が抱える課題を解決するために調理ロボットを開発している。

これまで開発販売した自動調理ロボットシステムには、たこ焼きやコンビニ向けのホットスナック、ロボットによる食洗など、様々な角度から調理ロボットの実証実験を行ってきた。

調理ロボットをレンタルとして貸し出し、月額サブスクリプションの定額課金モデルで提供するRaaSサービスである。売り切り型でロボットを店舗導入するには営業力が試されるが、RaaSであればサブスクリプションで提案でき、顧客のコスト負担も少ない。

これまで、ハウステンボスやイトーヨーカドーのフードコート「ポッポ」などへの導入実績がある。まだない調理ロボット産業の創出に邁進するスタートアップだ。

inaho


「Inaho(イナホ)」は2017年設立のロボットベンチャーで、自動野菜収穫ロボットのサービスを展開している。

農家の高齢化や担い手・人手不足解消に向けて、AIを活用した新しい「スマート農業」を提案しており、国内初の自動野菜収穫ロボットに、農作業に従事する事業者の注目を集めている。

収穫量に応じた従量課金型のRaaSを提供しており、「市場の取引価格×収穫量の一部」を利用料してイナホ側へ支払うビジネスモデルは評価が高く、ピッチコンテストやビジネスコンテストでも受賞歴を多く持つ。

農家側も初期投資コストをかけずにロボットを導入でき、かつ製品のアップデートにかかる費用負担もなく行えるのは大きなメリットだろう。

ロボット技術が、より身近に活用できるようになったRaaS。マンパワーが必要な業界や、人材不足に悩む企業では、さらに需要が高まり、実績も多く作られていくはずだ。

文=古田島 大介

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