新型コロナウイルス感染拡大後の企業の姿勢に生活者の目が向いている
新型コロナウイルス感染拡大後の生活者の意識の変化を尋ねてみたところ、「マスクやトイレットペーパーを通常よりも高額の値段で販売したり、転売を放置するインターネットのサイトに反発を感じる」を肯定する人(「そう思う」と「ややそう思う」の合計)が84%をしめている(図8)。
また、「学校が休みとなった子ども向けに低価格のお弁当を販売するなど、消費者に寄り添い、支えてくれる姿勢の企業やブランドを支持する動きが強まる」を肯定する人が59%をしめるなど、新型コロナウイルス感染拡大後の企業の姿勢に生活者の関心が向けられ、注目されている傾向がうかがえる。
また、「会社に行かなくても仕事がある程度、進められる認識が広まり、日本における働き方が今後、大きく変わる」を肯定する人も49%とほぼ半数をしめており、今後、テレワークなども含めた新しい働き方が広がると感じている人がいることがわかる。
キャッシュレス決済情報を活用せよ
我々のアンケート調査からは、新型コロナウイルス感染拡大前後における分野別の消費支出の増減傾向、買い物の行動変化、また消費者心理の変化などについては垣間見ることができるが、実際に消費がどの分野、どの地域でどれくらい落ち込んでいるのか(あるいは増えているのか)については把握できない。政府が実施している家計調査は約2カ月後れで発表されるので、これも即時性には欠ける。
また本調査では、新型コロナウイルス感染拡大に関して、フェイクニュース(と思われるもの)を見聞きしたかについても尋ねているのだが、実に半数以上の人が、フェイクニュースと思われるものを見聞きしたと回答している。トイレットペーパーがなくなる、熱でウイルスが死滅するなどの情報に加えて、経済の実態についても、憶測や大げさな表現がネット上で散見される。特定業種(例:百貨店)に関する売上などの断片的な情報が、唯一信頼されるものとして公表されている状態である。
我々に必要なのは、より包括的かつ即時性のある消費情報である。そこで注目したいのがキャッシュレス決済情報である。2020年2月時点でキャッシュレス・ポイント還元事業の加盟店登録数はおよそ100万店舗あり、それらの店舗におけるキャッシュレス決済額の情報に基づきポイント還元分が補助されている。この仕組みを活用すると、日本の消費情報に関する概観が即時的に把握できる。
さらにいえば、日本人のキャッシュレス利用が進めば進むほど、より正確な消費の全体像が把握できる。キャッシュレス決済の更なる推進と、その情報を業態別、都道府県別などに集計して定期的に公表することで、国民に正しい情報を伝えるだけでなく、政策立案者や企業経営者の迅速な意思決定に役立つ重要な情報源とすべきである。
【参考】調査概要
■調査名 「新型コロナウイルス感染拡大による生活への影響調査」■実施時期 2020年3月
■調査方法 インターネット調査
■調査対象 全国の満15~69歳の男女個人
■有効回答数 3098人
■主な調査項目
◇情報収集行動
・・・情報収集の仕方・変化
◇コミュニケーション
・・・親子関係、夫婦関係、地域関係に対する意識
◇就労スタイル
・・・就労状況、就労意識
◇消費価値観
・・・消費に対する意識、今後積極的にお金を使いたい分野
◇消費実態
・・・外食、宅配、オンラインサービス等の利用意向・変化
◇生活全般、生活設計
・・・景気・収入などの見通し、直面している不安や悩み
執筆者
森 健:未来創発センター林 裕之:コンサルティング事業本部
日戸 浩之:コンサルティング事業本部