ヘンリー王子の王室離脱が避けられないものだったとしても、ロサンゼルス、特にメーガン妃のエンターテインメント界では王子が場違いの存在だということは変わらない。米金融大手JPモルガン・チェースでの講演の仕事を終えた直後は、インスピレーションを与える著名人としての価値がこの状況から脱する道となるかにも思えたが、大規模イベントに新型コロナウイルスの影響が出ている今、王子自身のブランドにそれが今後どのような意味を持つようになるのかは分からない。
ヘンリー王子の個人的な課題は、英王族としての公務がなくなった後のアイデンティティーの確立(あるいは再確立)だ。ロサンゼルスではロンドンと比べ、儀礼的な慈善イベントや私的な会の機会があまりない。ヘンリー王子は、メーガン妃がハリウッドのパーティーに連れてきた元王族のお飾り以上の存在として自らを確立する必要がある。
アーチウェル財団はその踏み台となる可能性があるが、ヘンリー王子にはもっと具体的なものが必要だ。王子は、攻撃ヘリ「アパッチ」に乗務してアフガニスタンで2度の任務を経験した真の愛国者だ。また、自身が立役者となった傷病兵の国際スポーツ大会「インビクタス・ゲーム」も王子にとって生産的な形で続くようだ。金銭面の大きな問題は解決されないだろうが、王子が取り組める良い活動にはなる。
ヘンリー王子の新生活は、新型コロナウイルスによりさらに複雑化している。父親のチャールズ皇太子は、自身もウイルスに感染しながらバークホールの別邸から執務を続けている。また祖母のエリザベス女王は、英国が感染者数の増加と闘う中、テレビ演説で国民を励ますという異例の対応を行なった。ヘンリー王子は毎日のように、自らが後にした英王室が新たな“戦争”の中で国民に尽くす痛ましい姿をまざまざと見せつけられている。