検査が少ない日本の貴重なデータ、LINE調査で分かったこと

LINEのコーポレートページより(上)。厚生労働省が実施する「全国調査」では、プッシュ通知で一斉に発熱の有無や職業などをアンケート。発熱がある人は、都道府県による「パーソナルサポート」で、適時必要な最新のアドバイスが届く。ユーザーに「友達」登録してもらい、長くフォローアップする。

日本の人口の2割に近い2500万の回答を集めた、厚生労働省とLINEが実施した新型コロナウイルス対策のための全国調査。4日以上発熱していると答えた人が0.11%の2万7000人に上り、長時間の接客を伴う飲食などの対人サービス業、外回りをする営業職で平均の2倍近以上、発熱の症状があるとわかった。

この大規模調査の実施に関わった、データヘルスや医療政策が専門の宮田裕章教授(慶應義塾大学医学部)は、職種ごとに新型コロナウイルスの感染リスクが大きく異なる可能性を踏まえ、「全ての職種について、感染リスクをマネジメントする新しい働き方をすぐに確立しなければならない」と指摘している。4月10日に行ったインタビューを2回に分けて掲載する(2回目は『民主主義国家でICTを使ったコロナ追跡は可能か? 宮田教授が解説』)。

──今回の調査の内容について教えてください。

LINEを通じて全国8300万人にプッシュ通知を出し、発熱などの症状の有無と職業や住所などの属性を聞きました。第1回(3月31日〜4月1日)は2453万人、第2回(4月4日〜5日)2467万人の有効回答が得られました(編集部注:第3回の調査は4月12日〜13日に実施)。

第1回調査の結果では、4日以上発熱していると答えた人が全体の0.11%、2万7000人に上りました。もちろん4日間発熱が出たからといって、新型コロナウイルスに感染している訳ではありません。

新型コロナウイルスの感染の実態を把握するには、本来はより多くの方にPCR検査を行うことや抗体検査を実施することがより正確なアプローチです。しかし、PCRを多くの人に実施する体制が整っていないし時間がかかる。また抗体検査も精度に課題があり、時間とコストがかかります。このような中で、出来る限り早く日本の実態を把握し、対策を打つために用意したのが今回の調査です。

先行して3月5日に神奈川県でLINEの調査プロジェクトを実施しましたが、インフルエンザが収束した後の3月以降は、今後の感染リスクを予測する上で発熱の症状が一定程度信頼できる間接指標であることを確認しています。

神奈川県のプロジェクトでは、発熱の症状を訴えた人の割合は、3月中旬にかけていったん下がったあとに、下旬から上昇しています。これは何を意味しているかというと、2月27日に休校要請し、3月2日から実施したことで、社会全体で自粛が行われて、活動が下がったものの、桜が開花した三月中旬とその後の三連休で自粛が緩んだ、という社会活動の量と連動していると考えています。陽性患者数、新型コロナ外来(帰国者・接触者外来)の件数も同様に推移しています。


神奈川県のデータ(宮田裕章教授提供)。左上がLINEの調査で得られた発熱者の推移、右上が小売と娯楽施設の活動量(グーグルのスマホログのデータ)。下は外来受診者と陽性者数の推移。
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構成=成相通子

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