新型コロナ患者や濃厚接触者「隔離」の舞台裏。岡崎医療センターはどう受け入れたか

集団感染があったクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」から、乗員らを搬送する車(GettyImages)


滞在者128人のうち、実は7割が外国籍の人だった。国名は公表していないが、18カ国もの人々が集まった。職員は翻訳機「ポケトーク」や翻訳アプリなどを使いながら、コミュニケーションをしたという。

また受け入れ当初は、開院前でベッドしかなかったため、快適に過ごせるようにアメニティの向上を図ったという。各部屋にテレビや冷蔵庫、電気湯沸かし器を設置したほか、無料Wi-Fiを整備し、iPadの貸し出しも行った。このほか、支援物資で寄付された手作りの脳トレのゲームや、中国語や英語の新聞、雑誌を提供した。

日本ゼネラルフーどのお弁当
日本ゼネラルフードから毎日3食の弁当が届いた

食事は、給食サービスを手掛ける日本ゼネラルフード(名古屋市)に急きょ依頼し、弁当を1日3食提供した。アレルギー食や菜食主義食、ハラルなど宗教上の食制限にも対応した。弁当にはデザート付きで、滞在者から好評だったという。

弁当のふたには「1日も早くご自宅に戻れますよう、お祈り申し上げます。お辛いでしょうが、頑張ってください。調理スタッフ一同」と、日本語と英語で激励のメッセージが添えられた。

岡崎の八丁味噌やイチゴ。地元で広がる支援の輪


岡崎市産イチゴ
岡崎市の若手農業グループからは、イチゴなどが贈られた

地元の愛知県を中心とした多くの企業や団体から、多くの支援物資が届けられたことも特筆すべきだろう。

岡崎は、旨味が特徴の八丁味噌の産地。まるや八丁味噌の「みそかりんとう」や味噌汁の粉末などがダンボールで届けられた。岡崎市若手農業グループからは、イチゴやトマト、無洗米などを贈られた。このほか、牛乳、手作りドーナツ、パン、せんべい、インスタント麺、ペットボトル飲料なども届き、滞在者に提供された。毎日差し入れがあった食べ物には、おにぎりやピザ、ハンバーガーなど滞在者のリクエストが反映された。

みそかりんとう、カツサンド
支援物資として届いた、カツサンドや、八丁味噌のかりんとう

手作りドーナツ
メッセージが添えられた、地元のカフェの手作りドーナツ

岡崎医療センターの目の前には、岡崎小学校があり、未曾有の事態に当初は近隣住民からは不安があったというが、医療センターとして感染症対策を万全に行うことで、周辺住民が応援する動きも生まれた。小学生たちからも「早く家に帰れますように」「Don’t give up!」などのメッセージが届いた。


岡崎小学校の子どもたちから滞在者に贈られたメッセージ

また、外国人の滞在者たちも、岡崎医療センターを去るときに病院にメッセージを残していった。中国語のメッセージを一つ紹介しよう。「私たちを気遣い、助けてくれた皆さまに感謝、おもてなしに感謝。患者同士の助け合いに感謝。おかげさまで早く健康な状態に戻れました。もうちょっとしたら家へ帰れます、とても幸せです」

日本医師会によると、新型コロナウイルス感染症の患者に対応する医療従事者やその家族に対して、心無い風評被害が各地で起きている。新型コロナウイルスによって、地域社会の「分断」を起こさないためにも、今回の岡崎医療センターの感染者と濃厚接触者の受け入れや支援のあり方について「岡崎モデル」として広がってほしいと思う。

文=督あかり 写真=藤田学園提供

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