昨年、長者番付入りを果たしていた2153人のうち267人が、資産を10億ドル以下に減らし、ランキングから消えている。
フォーブスは本年度の世界長者番付の作成にあたり、3月18日時点の株価をベースに保有資産の算定を行ったが、当初は3月6日の株価を基準に用いようとしていた。しかし、6日から18日の間に株価は大きく下落し、226人がビリオネアの地位を喪失した。
しかし、別の理由でランキングから消えた富豪たちも多い。その筆頭にあげられるのが、ファストファッションチェーンの「フォーエバー21」を共同創業したドン・チャンと妻のジン・スク・チャンの2人だ。
ショッピングモールでの売上急落に直面したフォーエバー21は、昨年9月に破産申請を行った後、事業規模を縮小し、今年2月に8100万ドル(約88億円)でモール運営企業のSimon Property GroupとBrookfield Propertiesに事業譲渡を行った。
同社の創業者夫妻のドン・チャンとジン・スク・チャンらが、韓国を離れアメリカにやってきたのは1981年のことだった。その後、2人は1984年にフォーエバー21を設立し、2015年には年間売上40億ドルで、4万3000人を雇用する企業に成長させた。
2016年のフォーブスのインタビューでドン・チャンは「私たちは何も持たずにこの国にやってきた」と語り、移民夫婦が実現したアメリカンドリームについて話した。当時の2人の保有資産は59億ドルだった。
しかし、フォーブスの試算で現在の夫妻の保有資産は1億ドル以下にまで減少し、ビリオネアランキングから完全に消え去った。
今回のパンデミックが始まる前に、ビリオネアの地位を失ったもう一人のアパレル界の富豪が、「カナダグース」CEOのダニ・ライスだ。カナダグースの株価は2019年2月から下がり始めここ1年で72%も下落した。
同社の業績は2019年を通じてアナリスト予想を下回ったが、1000ドル近い高級ダウンを主力商品とするカナダグースは、重要市場の一つである香港での抗議デモの高まりによってさらなる打撃を受けた。ライスの祖父はホロコーストの時代を生き延びた後、欧州を離れ、1957年にMetro Sportswearを創業した。ライスは2001年に同社のCEO職を引き継ぎ、2001年に社名をカナダグースに改めていた。