同社のコスト管理は厳格で、過去からの問題や労働組合の力も限定的、高い成長力で営業するよく管理された企業、過去10年間で株主に莫大な利益を生んできた。
同社は先日、2020会計年度の利益は9億5000万~10億ユーロ(約1100億~1200億円)になるとの見通しを発表した。同社の2020会計年度は3月31日で終わっており、今年の第1四半期に新型コロナウイルスの影響を受けながらも、利益はこれまでの推定額の下端を維持できると見込んでいる。
同社の運航便数は現在、通常時の1日2400便から激減して同10~20便となっている。3月に運航した定期便は3万3000便だが、予算上では6万4000便が予定されていた。
同社は、欧州で大半のフライトが欠航する事態をまねいた新型コロナウイルスの流行による特別損失は最大3億ユーロ(約360億円)に上る見通しだとしている。しかし同社は市場の先行きの不透明さを理由に、2021年3月31日までの現会計年度に関しては現時点で業績予想を出せないとした。
同社便の大部分が運航されている欧州では、ロックダウン(都市封鎖)と国境閉鎖がまだ続いており、国際線の再開のめどは全くたっていない。
同社は先週、アイルランド証券取引所に対し「弊社は年度末の現金同等物が38億ユーロ(約4500億円)、またグループ所有航空機のうちの327機(77%)は抵当や負債がない状態で、当社の貸借対照表は業界でも特に強固だ」との報告書を提出した。
欧州第2位の格安航空会社イージージェットは、全機を一時的に運航停止とし、2020~21年度の業績見通し発表は今後の状況がより明確になるまで見合わせている。一方のライアンエアーによる次の財務報告は5月18日で、年間業績が発表される予定だ。
同社の貸借対照表と現金残高は比較的健全であり、運航停止が1年続いたとしても耐えられる可能性がある。だが同社は投資家を安心させるべく、即座に流動性資産の保護とコスト削減に動き、航空便の運休や資本的支出の先送り、自社株買いの停止、採用活動や裁量支出の凍結、上級管理職を含む社員全員の4~5月分給与の50%カットなどの対策を実施した。