JUAN JOSE JUSTE University of Valladolid
バリャドリッド大学 ファン・ホセ・ジュステ教授
2007年にアメリカでサブプライム・ローンが破綻すると、スペインはバブル崩壊の余波をもろに受けた。さらに09年にはギリシャの国家予算粉飾によってユーロ危機が火を噴き、12年にスペインは財政破綻寸前に陥っている。
「幸いにも国家としての破綻は避けられたものの、スペインの失業率は13年の段階で26%以上にまで膨らみました。現在も失業率は23%あり、とりわけ20代の若者の失業率は50%を超えています。この現状を解決するためには、輸出産業を強化するほかありません。価格競争では新興経済国に対抗できるわけがありませんから、イノベーションによって生産性と商品の質を高め、グローバルな舞台で対抗できる方法を探るべきです」
スペイン北部のカスティーヤ・イ・レオン州はマドリッドから距離が近く、面積はポルトガルよりも大きい。西はポルトガルと国境を接しており、東はフランスと近接する重要な産業ゾーンだ。
「カスティーヤ・イ・レオン州では経済開発公社が3つのテクノロジー・パークを造り、ここに技術インフラの幅広いネットワークを集積しています。バイオマス、デジタル・コンテンツなど16のクラスターに分かれ、多くの企業がテクノロジー・パークの中で技術を磨くのです。バイオ技術+健康産業、家具+繊維+石材、文化遺産+スペイン語といった分野間の統合を進めれば、スペイン固有の資源に新たな価値を生み出せるでしょう」
14年から20年にかけて、カスティーヤ・イ・レオン州は農業、食品、自動車産業、健康・社会福祉など幅広い分野で研究・イノベーション戦略を進める。スペインには約8,000もの地方自治体があり、500人以下、中には100人未満の自治体もある。小さな地域発の商品であっても、イベリコハムのように国際市場でグローバルな競争力を発揮できる。
「イノベーション専門の部署がすべての企業にある訳ではありませんので、人間関係がどれだけ複雑に絡み合っているか、起業家がお互いにどれだけ密接に関わっているか、が重要になってきます。テクノロジー・パークで活躍する新しい世代の起業家は、イノベーションの重要性をよくわかっています。スペインではおいしいノンアルコールワインが開発されており、国内の高齢者向けに潜在的市場を掘り起こすかもしれません。飲酒が制限されているアラビア諸国に輸出すれば、『自分たちもワインを飲んでみたい』という需要を喚起する可能性があります。小規模の企業から、興味深いイノベーションが次々と生まれつつあるのです」