それと同様な流れが、「5G元年」とされる2020年に生まれている。YouTubeやTikTokなどに代表されるユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ(UGC)の登場が、巨額の収益を生み出すオリンピックのTV放送のようなスポーツ放映権にダメージを及ぼす可能性は高い。
スポーツ放映権の「ダム崩壊」は、スポーツの権利元、放送局そしてそれを取り持つ広告代理店にとって大きな痛手となりえる。もし崩壊すれば、世界的なスポーツ・ビジネスモデルの根幹が揺らぎかねない。
ダム崩壊を回避する策はあるのだろうか。もちろん…と言ってはなんだが、対応策はいくつかある。
ビジネス・ソリューションとして「UGC配信権」を提案
まず、そのひとつが「5G配信権の確立」だ。
いや、正しくは「5G+UGC配信権」とすべきか。ここでは以降「UGC配信権」と略記する。
通信会社のソリューション上に、スポーツ・ビジネスをどう構築するべきか思案し始めた3年前から、私は当時の電通スポーツ局放送映像事業部の一部のメンバーに提言していた。
まだ単純な着想に過ぎないが、まずはテレビ局にセールスしている「放映権」とは別にUGCによる権利を定め、「UGC配信権」として新たな権利料を確立すべきだろう。
これまで通り「放映権」セールスを行い、それとは別にUGCによる動画制作を「UGC配信権」として切り出し、YouTubeなどSNS各社に売りに出す。もしYouTubeが購入した場合、UGCはYouTubeのみに露出し、他のSNSにUGCが掲載された際は、他社に対し著作権侵害勧告するという仕組みだ。
つまりスタジアムで「動画を撮るな」と管理するのではなく、「撮った動画はYouTubeへ」と促進。それ以外の事業者には削除依頼を出す。もちろん、放映権とUGC配信権はセット販売でテレビ局に販売しても悪くない。
5GとUGCの到来により、放映権のダムが崩壊し、ビジネスモデルが根幹から揺らぐのであるなら、それに先んじて権利を切り出す必要がある。たとえ放映権料が目減りしたとしても新たにUGC配信権をセールスすることで、権利元への補填が可能となるだろう。