八村塁xダルビッシュ有がライブ配信する時代に。5G+UGC配信権を確立せよ

八村塁(左)とダルビッシュ有。「読む5G」サムネイルデザイン=高田尚弥


MLB放映をヒントにした「UGC配信権」のビジネスモデル


実はこのモデルには前例がある。15年前、私はMLB(大リーグ野球)公式サイトを担当していた。MLBは30球団から出資を募り「MLBアドバンスド・メディア(MLB Advanced Media 以下、MLBAM)」社を2000年に創設。MLBがインターネット・プロトコルを介して運用する事業を同社に移管した。テレビ放映権についてはMLB本体が管理し、「インターネット配信権」についてはMLBAMが管理するよう仕分けたのだ。

MLBの放映権を仕入れていた電通は15年前、それまで通りテレビ局向けに放映権を購入。さらにヤフーなどインターネット事業者向けにこの「インターネット配信権」を購入した。権利元のMLBは、インターネット時代到来により目減りする可能性のあった権利料に対し、先手を打ったわけだ。

MLBは現在、このインターネット配信権をアメリカ国内ではMLB.TVとして自社で運用して配信料を稼ぎ、例えば日本のようにDAZNにインターネット放映権として卸すなど、それぞれ収益を上げている。MLBAMは2016年には6億2000万ドルの売上を計上し、2014年には米『Forbes』誌から「もっとも巨大なメディア企業」と表現された。

5G到来とともに、これと同様の権利構図を構築すべきだ。UGC配信権を先んじて確立することにより、試合会場の観客は気兼ねなく撮影して配信することができるし、また会場外では視聴者がカジュアルにスポーツ動画を楽しむことができる。新しい視聴方法が生み出される時代になる。

もうひとつの策は、既存メディアがUGC配信権を取り込む積極促進案だ。

権利元からメディア自体が放映権を仕入れる際、UGC配信権も同時に購入し、UGCをメディアの正規コンテンツとして活用する。

例えば、試合会場から通常のテレビカメラにより映像を制作するとしよう。そこに同じ会場で録画されたUGCをスイッチングなどで取り込めば、多アングルのテレビ放送を提供することができる。UGCのうちテレビで使用しない動画は、テレビ局の公式プラットフォームなどに開放するのだ。

テレビ放送とは別に、公式YouTubeチャンネルなどの別のプラットフォームで広告収入を得るか、それともサブスク・モデルで購入を促すか…...いくつかのビジネスモデルが構築できるだろう。シナリオ次第ではUGCを用いた「360度映像」などの仕入れも可能になる。

メディアが放映権と配信権を支払う代わりに、テレビ映像とUGCの双方をオンエアし、収入増を図る方策だ。

野球スタジアム
(GettyImages)
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文=松永裕司

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