たとえば劇中に出てくる森林は、緑色の色合いが少しずつ違うLEGOを何種類か組み合わせていて、実に北欧的な色づかい。フィンランドを第二の故郷と呼んで、家族で何度も旅していたユキちゃんの色彩センスが受け継がれていると感じた。
生前、会社で一緒にランチをしたときに、Tくんの LEGOで作ったショートムービーを見せてくれて、「ほらこれ、ついに人形が空を舞うようになったのよ!」とうれしそうに話していたのを思い出した。あれはたしか、透明な糸で宙吊りにしたのだったよね。
LEGO部の展示教室の前で、短い時間だったがTくんと話すことができた。葬儀で会って以来、ほぼ1年ぶり。ますますしっかりとした青年になっていた。まっすぐに人の目を見て話すところはお母さんそっくりだ。目のかたちもそっくりだ。ユキちゃん、Tくんの作品、すばらしかったよ。これからも作り続けるに違いないから、私も追っかけして全部観に行くからね。
その後しばらく経ってから、Tくんからフェイスブックの友達申請が来た。プロフィールを見ると、Tくんの好きな映画には、スター・ウォーズ、バック・トゥ・ザ・フューチャーとたくさんの映画が並んでいて、どれも息子の好みと似ていた。英語が好きそうなところも気が合いそうだ。
息子はTくんに会ったことはないけれど、中学受験の時に手紙をやり取りした間柄でもあることだし、友達申請してみたら?と息子に提案したところ、さっそく友達になったようだ。息子はそれまでフェイスブックはやっていなかったが、Tくんと友達になるためだけに開設し、今は、友達はTくんただ一人という状態だ。
ユキちゃんもきっと見ているよね、Tくんと息子がつながったよ。なんだかうれしいね。
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連載「乳がんという『転機』」。筆者は電通 チーフ・ソリューション・ディレクターでForbes JAPANオフィシャルコラムニストの北風祐子さん。
初動から立ち直るまでのブログ的記録。11人に1人が乳がんになる時代、大親友がたまたま医師だったおかげで筆者が知ることができたポイントを、乳がんの不安のある女性たちやその家族に広く共有し、お役に立てていただけたらと考えています。
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