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2020.04.10 18:00

人間いつ死ぬかわからないから|乳がんという「転機」#16

北風祐子さん(写真=小田駿一)

北風祐子さん(写真=小田駿一)

新卒で入った電通という大企業で25年間働き続け、仕事、育児、家事と突っ走ってきて、「働き方改革」のさなかに乳がんに倒れた中間管理職の連載乳がんという『転機』第16回。

言いたいことは直接言う


人間いつ死ぬかわからないから、言いたいことは、機会を逃さずに言いたい相手に直接言うことにしている。これは乳がんになってからのマイルール。胸にしまったまま死にたくない。

2017年10月5日。今日は200人集まっている定例会で、社長に挙手して直接質問できる機会があったので、乳がん手術後、社の「働き方改革」について感じている違和感と、今後社長にどうしてもお願いしたいことを言った。

直言の内容はこうだ。うまくいっている人だけで「働き方改革推進チーム」を編成していても、真の働き方改革にはつながらないのではないか。社長の知らない地味な人をチームに入れてはどうか、というものだ。「うるさいやつだ」とブラックリスト入りしても構わない。言いたいことは、直接言うと決めたのだから。

すると社長は、「レギュラー以外はドロップアウトしてもいい、生き残った人だけで戦えばいい、という考え方は、間違っている。部員が100人いたら、100人で戦うべきだ」と返答してくださった。その言葉に少し安心した。と同時に、100人が戦える状態になるように、できる限りのことをするのは中間管理職である自分の役目の一つでもあると感じた。投げたボールがこちらへ返ってきた。

人気企業だったときとは、わけが違う。自分が憧れて入ったこの会社に、自分の娘も息子も見向きもしないのは、それなりに寂しい。ここに残る限りは、できる限りのことをしたい。

中秋の名月は、いつもと同じにきれいだった


昨夜の中秋の名月はうっすら雲に隠れて、たまに顔を出して、澄んだ光を放っていた。美しかった。娘と息子にちゃんと見るように言えばよかった。と、話したら、息子は「見たよ」。すごくきれいだったでしょう、と言うと、「別に」。えーっ?

すると息子は、「……いつもと同じにきれいだった」と続けた。月、いつも見ているのね。いいね。

台風一過、これが人生さ


2017年10月23日。息子が送ってきた台風一過の近所の写真に心洗われた。台風があるから台風一過があるわけで。台風は困るが、台風一過は美しい。C’est la vie.(これが人生さ)

乳がん 台風一過
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文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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乳がんという「転機」

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