EVや自動運転など先進技術への投資の動向
EV化は緩やかに進むと予測している。100年以上続いた内燃機関を中心とした自動車産業時代の終わりが着実に近づいている。しかし、2030年時点のEV販売構成比の予想は10%(グローバル)と一部欧州メーカーの想定(約20%)には及ばないだろう。
25~30年に訪れる転換点(電動車の割高な購入コストをガソリン消費の節約で回収できる期間が3年以内に縮小する)までは、規制が主導する限定的なEV普及に留まると当社では考えている。40年に向けたEV急加速予想(40年のEV構成比が33%に達する)の実現には、全固体電池の量産化を含む、バッテリー性能と価格の大幅な改善や原油価格の高騰、政府による規制や補助金の大幅な変革が必要だろう。
では、EV化の課題とは? EVの本格普及に対する課題は、変わり映えはないが根が深い問題が多い。列挙すれば以下の4点となる。
1. 航続距離への不安
2. 割高な車両価格
3. 急速充電インフラの未整備
4. リセールバリューへの不安
そうしたなかで、ワイルドカードとなり得る市場は中国をおいて他にはない。中国では19年からNEV(New Energy Vehicle)規制が本格的にスタートしている。自動車メーカー各社はNEVクレジットの獲得を目指して、EVやPHEVの新型車を相次いで投入する計画を立てている。
しかし、NEV補助金が縮小された19年6月以降、中国NEV販売は前年を下回っており、19年10月のNEV販売は前年比46%減まで落ち込んでいる。「政策主導の電動化」が「消費者主導の電動化」にスムーズには移行していない。
電動化の最大のハードルが、バッテリーの性能/価格であることは言うまでもない。現状のバッテリー価格(1kWh当たり150~200ドル)をベースにすれば、自動車メーカーとしてEV/PHEVで収益を確保することは至難の業だ。現状のガソリン車に対するEV車の追加コストは8000ドル強となり、平均価格2.5万ドルの車両の購買層にとっては負担が重い。
車両価格5万ドル以上の高級車セグメントを除き、EV/PHEVの販売はNEV規制等の各国の環境規制をクリアするための最低限の台数に留めることが想定される。トヨタのプリウスが10年以上の歳月をかけて実現した、ペイバック期間3年をEVが達成する時期は20年代後半になるだろう。政府の補助金なしに消費者主導でEVが本格普及するにはまだ5~10年の時間を要すると冷静に見るべきだ。
ハイブリッドの優位性が際立つ時がくる。EVのコスト、使い勝手、収益性がガソリン車に対して劣っている期間、少なくとも向こう5年から10年の間は、完成車にとって重要なのは如何に多くのEVを生産/販売するか、ではない。
より重要なことは、自動車メーカーとして如何に多くの3つのコア部品(駆動モーター、インバーター、車載バッテリー)を量産できるかであると当社は考えている。ハイブリッド/プラグインハイブリッドの生産と販売で収益を確保しながら3部品の競争力を高めることがやはり得策であろう。
ハイブリッドは日本のガラパゴス化と揶揄されることもあるが、自動車産業の健全な発展のためには必要不可欠な技術である。中国NEV販売の失速、欧州CO2規制の達成等を受けて、向こう6~12カ月でハイブリッド技術に対する評価が一段と高まると当社では予想している。