坊垣:醸造家だけではなく、組織を横断する若手が活躍したケースとして、白鶴酒造(兵庫県)の「別鶴」プロジェクトも。これは20〜30代の若手社員が自主的に発案して主導した新しい日本酒の開発プロジェクトですが、経営層への説得材料として「Makuake」でサポーターを募りました。その結果500万円超が集まり、一般販売が決定したという、うれしい事例です。
坊垣佳奈氏
生駒:酒蔵としては珍しいマーケティング・ディレクターを採用した「楯の川酒造」(山形県)も推したいですね。グラミー賞を受賞したバンドPhoenixとコラボするなど、斬新な企画とコミュニケーション手法によりわずか9年で海外輸出が44倍に成長しています。
コンセプトと物語を伝える
坊垣:そのコミュニケーション力は日本酒業界の課題ですよね。「Makuake」でさまざまなプロジェクトをサポートしていますが、モノをつくる人はみんなカッコいいし、想いも熱い。でも、酒蔵のホームページではそれを伝えられていないことがある。みなさん、それぞれ最良の日本酒をつくろうと必死で、そこにコンセプトやストーリーを描けていないというか。
生駒:やはり若手でベンチャーになりますが「WAKAZE」(東京・パリ)は「人生に、ワクワクを仕込もう」というブランドコンセプトでボタニカルを使用した日本酒をつくり、パリに酒蔵を建設するなど、いい意味で日本酒らしくない取り組みが面白い。日本のベンチャー企業が、海を越えて海外でSAKEをつくるなんて、新しい時代がやってきたんだなと感じますね。
坊垣:他にも飲む時間帯にあわせた日本酒ブランド「HINEMOS」を提供する「ライスワイン」(神奈川県)もリクルート出身の方が創業したスタートアップです。
レベッカ:誰が、どんな思いでつくっている日本酒なのか。消費者にとっては、そのストーリーが、購買の大きなトリガーになるのですよね。
生駒:消費者が日本酒を選ぶ際に決め手となっていたのは、数年前まで、新酒鑑評会での受賞歴、有名酒販店での取り扱いなどでしたが、今は価値軸も多彩になり、選択肢そのものが増えています。ぼくらのオンライン販売を含め、いま、日本酒の世界はもっと自由に多様化しています。