レベッカ:すると風味は失われてしまうし、生ひね(劣化臭)が出るので、飲み手からすればせっかくの純米大吟醸なのに期待ハズレの結果に終わってしまいます。
JAPAN CRAFT SAKE COMPANYでは、日本酒が蔵元から消費者に届くまでの保管状況・販売管理・市場価値をモニタリングし、飲み手が最高の状態で楽しめるマイナス5℃輸出システムの構築に取り組むほか、新たにSake Blockchainという品質保証システムを導入し、日本酒の流通に透明性とトレーサビリティをもたらす取り組みもおこなっています。その目的はすべての日本酒が海外できちんと流通し、適切に評価され、価値を高められる環境を作ること。これら周辺環境の整備が急がれます。
地域の活性化
生駒:ちょっと話は遡りますが、質の高い日本酒が人気となった背景には流通の進化も大いに関係しているんです。例えばヤマト運輸のクール宅急便が発売されたのは87年ですが、それにより今まで飲めなかった遠方の生酒も手に入るようになりました。それまでもパック酒などの普及酒はもちろん全国で販売されていましたが、こだわりの日本酒は生産地を出ることがなかなかなかったんですね。
生駒龍史氏
坊垣:となると日本酒をきっかけに今まで縁のなかった地方を知り、訪れることも増えてきますね。実際に、「上川大雪酒造」(北海道)は上川町という小さな町の創成を目的に創設された酒蔵ですが、このほど帯広畜産大学との提携を発表し、大学のキャンパス内に酒蔵を建設することになりました。学校内で日本酒が生産され、販売されたら大きな観光資源になるでしょう。
藤原:これからという意味では、シャンパーニュ「ドン ペリニヨン」の醸造最高責任者であったリシャール・ジェフロワ氏が富山に新設する蔵も大きな話題となっていますね。日本酒が地方に目をむけるきっかけとなっている好例だと思います。
持続可能な環境づくり
坊垣:いまや業界を横断して課題となっているSDGsは日本酒でも問われていますね。「ナオライ」(広島県)では三角島をテーマにしたスパークリングレモン酒の販売を通じて耕作放棄地の再活用や、国内で有機米を生産する田んぼを増やしていく取り組みを行っています。
藤原:オーガニックという観点からは「天鷹酒造」(栃木県)も出色です。有機米の生産に力を注ぐとともに、醸造所の機材、原料の保管方法などすべてのプロセスにおいてJASの基準を満たし有機認証を得ています。
レベッカ:いま日本では自然派ワインが大変人気ですね。でも、もともと日本酒はその成り立ちからしてナチュラルなものですから。
ちょっと面白い話なのですが、たとえば純米無濾過生原酒を英訳するとPure Rice, No Chacoal Filtered, No Pasteurizedとなるのです。でもほかの日本酒も基本的にPure Riceなのに純米酒だけがPure Riceと表現されるのは誤解を招くでしょう? このように日本酒はラベルの表記の仕方も一考の余地があるんじゃないでしょうか?
藤原:その点、ワインは世界的な規格や資格、スクールもつくられていて共通認識しやすいですね。